左翼手が従来より25歩前 阿南光が前進守備を打ち破る センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(19日、甲子園) ◇○阿南光(徳島)11―4豊川(愛知)● 【熱戦を写真で】豊川-阿南光(1回戦) 右打席に入った阿南光の2番・西村幸盛は外野の守備位置を見てびっくりした。「定位置より、めっちゃ前に来ているな」。この驚きが西村をリラックスさせた。 2―0で迎えた二回2死満塁。「強くスイングをすれば、外野の頭は越える」と心を落ち着けた。2ボール1ストライクから、内角球をシャープなスイングで引っ張った。打球は低い弾道で左中間へ伸び、背走する豊川の左翼・林優翔が懸命にグラブを伸ばしたものの、芝生に落ちた。走者一掃の3点二塁打で、試合の行方を決定づけた。 西村が驚いたのも無理はない。この場面、ベンチの「前進」の指示を受けた林は、定位置から10歩ほど前に出ていたという。打球が飛ばない新基準の金属バットへの移行を踏まえ、定位置自体も15歩程度前にしていたというから、従来より計25歩ほど前にいた計算だ。 林は「前に意識があったので、1歩目がうまく後ろに動けなかった」。失点を防ぎたい場面だけに致し方ない部分はあるが、豊川の長谷川裕記監督は「2番打者なので(外野の)後ろに飛ぶことはないと思ったが、甘い考えだった」と悔やんだ。 バットの変更を受け、阿南光は打球が上がりすぎて失速しないよう、低く鋭い打球を目指して振り込んできた。この日は計10安打のうち単打が8本。長打は西村が放った二塁打2本だったが、いずれも狙い通りの当たりだった。 西村は「チームでつなぐ打撃を練習から意識してきた。それができてよかった」と満足顔だ。冷静な観察眼で普段通りの野球をし、秋の東海王者に快勝。学校統合前の新野(あらたの)として出場した1992年大会以来、32年ぶりのセンバツ白星を手にした。【石川裕士】