中山優馬が逃げ場のない空間楽しむ、栗山民也演出「血の婚礼」本日開幕
栗山民也が演出、中山優馬が主演を務める舞台「血の婚礼」が、本日12月7日に東京・IMM THEATERで開幕した。 【画像】舞台「血の婚礼」メインビジュアル スペインの劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカの三大悲劇の1つとされる「血の婚礼」は、スペイン・アンダルシアを舞台にした“愛と運命の物語”。互いの家族の期待を背負いながら、結婚式を迎えようとしている1組の男女の元へ、花嫁の昔の恋人が現れ、すべてを変えてしまう。花嫁の元恋人レオナルド役を中山、花婿役を宮崎秋人、花嫁役を伊東蒼、レオナルドの妻役を岡本玲、花嫁の父役を谷田歩、花婿の母役を秋山菜津子が演じる。 開幕に際し、演出の栗山、出演者の中山、宮崎、伊東、岡本のコメントが到着。栗山は、本作の登場人物たちに思いを寄せ、「AIが誕生しプログラミングするだけで、すべての解答がすぐに得られる時代が間もなく来るようだ。だが自分や世界という存在を疑い、自分の言葉で自分に問い続け、自らの運命を必死に選択し、それでも間違えを繰り返し迷い続ける多くの人間たちを、わたしは愛する」とコメント。 中山は「『レオナルドは闘牛士なんだ』という栗山さんの言葉通り、心意気や生き方、気持ちの上で、獣に向かっていけるような強さ、環境や文化、日常を打ち破るパワーを持っていて、愛に飢え、愛に溢れた男です」と述べ、「シンプルで逃げ場がないセットは、力が試される怖さもありますが、楽しいですし、本当にありがたいです。美しい舞台芸術のなかで、泥の匂いがする愛の物語を、目の前で人が動かしていく。これこそ劇場に来たときしか味わえない面白さが詰まっている作品になっていると思います」と語った。 上演時間は休憩含む約2時間5分。東京公演は12月18日まで。その後、28・29日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールでも公演が行われる。 ■ 栗山民也コメント 最後の稽古で、登場し思いを散々喋ったあと退場していく登場人物のその後ろ姿を見つめながら、一体この人はこれからどんな思いで、どこに向かって行くのかと尋ねてみたくなる。わずか1カ月の稽古だが、ただの他人とは思えず、それぞれの人物のこれからを愛おしく思ってしまう。 AIが誕生しプログラミングするだけで、すべての解答がすぐに得られる時代が間もなく来るようだ。だが自分や世界という存在を疑い、自分の言葉で自分に問い続け、自らの運命を必死に選択し、それでも間違えを繰り返し迷い続ける多くの人間たちを、わたしは愛する。 ロルカの生んだ人たちの、幾度もつまずき壊れ、それでも自ら信じる感情にもがきながら立ち上がるそんな滑稽で惨めな姿に、熱く激しい人間だけのドラマを見る。人間の抱える闇や業のどこにも、一つの答えなどない。そんな人間たちの厄介で不可解な姿を、ただ美しいと見つめる。 ■ 中山優馬コメント 「レオナルドは闘牛士なんだ」という栗山さんの言葉通り、心意気や生き方、気持ちの上で、獣に向かっていけるような強さ、環境や文化、日常を打ち破るパワーを持っていて、愛に飢え、愛に溢れた男です。そして、稽古ごとに生まれるものが異なる、相手の空気感で敏感に変化する人物であり、芯は通っているけれど、日常を打ち破りたい、でも破れないという葛藤が続きます。レオナルドにとってこの愛は正義でも、花婿からは憎しみで悪の塊に見えているという、愛の両面が描かれていて、愛と死がリンクしているような内容でもあります。終盤の通し稽古で栗山さんが、「最後に悲劇を背負うのは女性で、今回はそういう終わり方なんだ。全て悲劇の結末は女性が受け取って、それでも生きていくしかない」と言っていたのが印象的でした。シンプルで逃げ場がないセットは、力が試される怖さもありますが、楽しいですし、本当にありがたいです。美しい舞台芸術のなかで、泥の匂いがする愛の物語を、目の前で人が動かしていく。これこそ劇場に来たときしか味わえない面白さが詰まっている作品になっていると思います。 ■ 宮崎秋人コメント 登場人物が少ないなかで、作品に描かれた時代のスタンダードとして、感覚的に普通の捉え方をしている人物が、花婿と花嫁の父親だと思います。そのなかで花婿は、自分の母親や花嫁に引っ張られることなく、軸がぶれないように演じること、結婚を控えている身であるが故に、飛び抜けて明るい人間に見えるかもしれませんが、周りが沈んでいることを知らせる人物としての責任も感じています。栗山さんは、スペインの暑さや大地を大切にされていて、広大な土地での閉塞感を滲み出さなくてはいけないと、意識し続けた稽古期間でした。ロルカが描いた詩的で美しいセリフを、音楽をはじめとするさまざまな要素で表現した今回の「血の婚礼」ですが、そのなかでも栗山さんが拘られていたのは歌の要素です。歌によって物語の中に句読点が打たれて、お芝居と歌がシームレスに紡がれています。様々な場所で上演され続けている作品ですが、この公演が一番面白いと思っていますので、それをぜひ劇場で確かめていただければと思います。 ■ 伊東蒼コメント いろいろと悩みながら、戦いながら過ごした稽古期間はあっという間で、いよいよお客さまに観て頂けるというワクワク感があります。花婿がいるのにレオナルドと逃げる花嫁のことを最初は理解できなかったけれど、花婿と一緒になろうとする純粋な思いを持ちながら、どうしてもレオナルドに惹かれてしまう、そんな彼女の揺れ動く気持ちをいまは理解できるようになりました。花嫁のことを小悪魔のように感じる方もいるかもしれませんが、それ以上に繊細な彼女が環境の中で揺れ動いて、迷って、自分と戦っている姿を見て、少しでもそこに感情移入していただけたら嬉しいです。栗山さんから「観客に見せようとするのではなく、相手との繋がり、会話が成立していればいいから」と言って頂いたことも自分の中で大きかったです。詩的な言葉の裏に込められた思いが全身から伝わる作品だと思うので、生々しく痛々しい感情を受け取って、観劇後に誰の気持ちで見ていたのか、自分のなかにもこういう感情があるのかもしれないと、感じて頂けたら嬉しいです。 ■ 岡本玲コメント レオナルドの妻は、静の役割を担いながら、他者をよく睨みつけている人。感情が昂ぶる瞬間を心の中でずっと抑え続けて生きていますが、時折マグマのような怒りが漏れ出る、その瞬間を大切にしたいと思っています。栗山さんがふとしたときにおっしゃる言葉の節々に、世界観が満ち溢れていて、それを自分のなかで膨らませていくのが楽しくて。そのまま表現しても単調になってしまうし、答えは一つじゃない。役者を信じて、「自分の言葉はヒントであって、正解ではないから、その場の出会いを大切に」と言われたのが印象的でした。行間に詰められた運命や土地柄、歴史を、言葉だけではなく、空気感や役者が放つ熱量で伝える「血の婚礼」は、改めて面白い戯曲です。時代が違うからこそ、自分に「今はどうなんだ」と問うような作品ですし、栗山さんによって、過去の「血の婚礼」とは、まったく違うものが生まれています。こんなに静かで熱い作品を年末にお届けできるなんて、役者冥利に尽きますし、新たな年を迎えるために、私たちが放つエネルギーを浴びに、ぜひ劇場へお越しください。 ■ 舞台「血の婚礼」 2024年12月7日(土)~2024年12月18日(水) 東京都 IMM THEATER 2024年12月28日(土)~2024年12月29日(日) 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール □ スタッフ 作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ 翻案:木内宏昌 演出:栗山民也 □ 出演 中山優馬 / 宮崎秋人 / 伊東蒼 / 岡本玲 / 舩山智香子 / 柴田実奈 / 金井菜々 / 角川美紗 / 谷田歩 / 秋山菜津子