教員を目指す学生が不登校児童・生徒と向き合う「もくせい教室] 小金井市が地元の東京学芸大学と連携した不登校対策の現場
小金井市にある東京学芸大学のキャンパス内に、不登校の児童・生徒をの社会的自立に向けた支援を目的に設置された、「もくせい教室」がある。 【画像】教員志望の学生が不登校の児童生徒と向き合う 先生を目指す学生が多い東京学芸大学と小金井市がタッグを組んで不登校対策に取り組んでいるのだ。 「もくせい教室」には、不登校になった児童・生徒約30人が通っていて、教育現場経験者を含め6人の指導員のほかに、東京学芸大学で教員養成課程を学んでいる学生たちが、ボランティアとして子供たちとかかわっている。
「教師になったら支援が必要な子供に目を向けていきたい」
この教室でボランティアをしている教育学部4年の野口悠巴さんは、「自分の好きなことがはっきりしている 興味がはっきりしている子供が多いという印象でした」と話す。 野口さんは、柔道場で体を動かす体験プログラムを企画、子供たちから楽しいと好評だという。 野口さんは卒業後、学校の先生になる予定で、「クラスの担任になったら、もくせい教室で学んだことをいかして、支援が必要な子供に目を向けることを大事にしていきたい」と話す。
ひとりの時間とみんなの時間
「もくせい教室」では、ひとりの時間とみんなの時間をそれぞれ持てるように時間割を組んでいる。 午前10時半からのみんなの時間では、大学構内のプレイパークで遊んだり 植物園で遊んだり。中学生が小学生の面倒をみてくれる。 教室で人気が高いのは季節ごとの行事だ。 焼き芋を作ったり年末にはしめ縄づくりが予定されている。行事に参加した子供がいろいろな経験を重ねてコミュニケーション能力を高めていると指導員の先生は分析する。 行事のほかに複数で会話をしながら進めていくゲームでも、コミュニケーション能力を高めるきっかけになっていると話す。 教育学部に通う1年生の杉浦心美さんもボランティアの1人。 参加したばかりだが、中学生の話し相手になっていて指導員からも頼りにされている存在だ。 「不登校の子供を自分の目で見てみると、やさしいこどもばかり。私もそうでしたが、学校にいると、リーダー的な子供がいたりして自分の立場を主張できない。 もくせい教室にいるこどもたちは、時には1人になりたい、ゆっくり学びたい、という気持ちがあるんだと思う。そういう気持ちに共感がもてる」と話す。 杉浦さんは、これからの学校の在り方について、「海外からみたらまだまだ日本は学歴社会。決められたレールに従って、進んでいかなければならない。もう少し自分のやりたいことができる学校。しばりつけることはせず、自由な学びができる学校があってもいいのでは」と考えている。 東京学芸大学専門研究員の河美善さんは、「教職課程を目指す学生にとって実践の職場となっている。教師や教育支援者になる前に不登校の児童・生徒と向き合う経験をしていれば、将来現場で不登校の子どもに出会った時の心構えが違う。学生たちにとってとても貴重な経験になっているし、不登校の児童・生徒たちにとっても、学生が良き理解者になっている」と話す。 小金井市では、2019年度の不登校児童・生徒数が小学校で61人、中学校で92人だったが毎年増加し、2023年度は小学校で146人(2.38%)中学校で151人(6.65%)に上った。 小金井市では東京都の補助事業を受けて校内別室指導を行っている。 23年度は別室指導を行っている学校の児童・生徒数に対して小学校では3.7パーセントの児童が、中学校では2.7パーセントの生徒が不登校から復帰するなどの効果をあげているという。 小金井市教育委員会学校教育部の向井隆一郎指導主事は今後の不登校対策について話しを聞いた。 まずは、効果がでている別室指導について、東京都の財政支援が必要ですが、実施校を増やしていくことができればと考えています ーー年々増加するなかで、新しい対策があるとしたら何が考えられますか 児童生徒の遅刻欠席傾向を迅速、正確に把握することが大切。現在「個人指導ファイル」を作成し、月5回以上休む児童・生徒がいればけがや病気が理由なのか不登校への傾向があるのかを把握するなど、早期対応できるようにしているが、今後さらに予防する取り組みが必要だと考えています。 ーー学校や授業の在り方を変えるべきだとしたらどんなことがありますか? 1人1人にあった教育。少人数ならできるが、35~40人学級だとどうしても取り残される児童生徒がでてくる。授業の在り方も、探求心をくすぐるような子供が学びたいと思える授業を考えていくべきだと思います。
大塚隆広