目指すなら今?行政書士「外国人を支援」の奥深い魅力 外国人コミュニティーの「縁の下の力持ち」に密着
そして「スワガット・インディアンバザール」にもあいさつを、と行ってみたところ、ビネスさんはなんと恩田さんの宣伝ポスターを店内にドーンと張り出してくれたのだ。 「恩田さんはロイヤーになる前にも来てくれたことがあって、日本語の書類を読んでくれたり、いろいろ助けてくれたからね」 ビネスさんは言う。そのおかげもあって少しずつお客が増え、仕事は安定していった。いまではすっかりリトル・インディアの有名人で、毎日インド人たちに呼ばれて西葛西を駆けまわるが、忙しさの中でも時間をつくり、英語の勉強を続けている。
「英会話教室に通って、法律用語の翻訳のレッスンを受けたりしているんです」 ■法律関係の用語は英語のほうが理解してもらいやすい 西葛西のインド人たちはIT関連の駐在員が中心で、教育レベルは高い。だから日本語がわかるインド人もたくさんいるが、法律関係の用語になると英語のほうがずっと理解してもらいやすいのだ。 こうして努力を重ねてインド人コミュニティーに食い込んだ恩田さんのような存在は重宝されて仕事が集中し、てんてこまいだ。それだけ外国人案件を扱う行政書士がまだ少ないということでもある。つまり、外国人が急増しているいま、チャンスが広がっている業界ともいえるのだ。
東京都の場合、届出済行政書士は2836人(2024年4月現在。東京都行政書士会による)で、この数は増加している。それでもまだ需要はあるし、とくに地方では足りないという。外国人の中に飛び込んでいってコミュニケーションを楽しめる人なら、きっとうまくいくのではないだろうか。 「まずは人間関係を築くこと。異文化交流ですよね。外国人を日本人と同じように見て、接することができるなら、とてもいい仕事だと思います」
そして心がけているのは「その国のバックグラウンドをしっかり把握すること。それに政治と宗教の話はしないことですね」と恩田さんは言う。加えて、 「日本人の価値観と違うところには怒らないようにしています。時間にルーズとか(笑)」 ■これから花形の職業になるかもしれない 気になるのは収入だが、日本行政書士会連合会が発表している報酬額の統計データによれば、在留資格に関する仕事の1件あたり平均額は以下の通りだ(2020年度)。もちろん報酬額は行政書士によって差があるし、こうした案件をいくつも同時並行して進めていくのが普通だ。
在留資格変更許可申請(就労資格)……9万5378円 在留資格変更許可申請(経営・管理)……15万9258円 在留期間更新許可申請(就労資格)……5万4447円 永住許可申請……13万1527円 少子高齢化による労働力不足を埋めるため、これからも外国人材は増えていく。彼らの在留資格を扱う行政書士はもしかしたら、花形の職業になっていくかもしれない。
室橋 裕和 :ライター