米政府の対中「半導体・AI」投資規制が実施段階へ 軍事転用など国家安全保障上の脅威に備え
アメリカの個人や企業による特定分野の対中投資を制限する新規制が、1年余りの準備期間を経て実施段階に入った。 【写真】大手VCのセコイア・キャピタルから分離独立した紅杉中国のウェブサイト 10月28日、アメリカ財務省は半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、AI(人工知能)の3分野について中国の個人、企業、政府との取引を制限する規制の最終規則を発表。2025年1月2日から施行する。 この新規制は、2023年8月にバイデン大統領が署名した大統領令に基づいて策定された。大統領令は上述の3分野の対中投資に関して財務省への届け出を義務づけ、アメリカの国家安全保障に脅威をもたらす場合には取引を禁止する規制を策定するよう求めていた。
■規制対象の絞り込みも 財務省は2023年8月に最初の草案、2024年6月に修正版の草案を公表し、それぞれパブリックコメントを募集した。これらの草案と比較すると、最終規則にはさらに若干の修正が加えられた。 例えば、アメリカ人がリミテッドパートナー(LP)として(中国の個人、企業、政府との取引に)投資する場合、投資金額は200万ドル(約3億640万円)未満に制限される。さらに、その投資が規制対象分野に流用されないことを契約で保証することも求められる。
AI分野に関しては、規制の対象範囲が(草案よりも)絞り込まれた。例えばアメリカの個人が(中国の個人、企業、政府が関係する)AI モデルの改善に従事する場合、それが商用目的に利用されず、なおかつ中国政府の諜報活動、監視行為、軍事開発、ロボット制御などの用途にも使われない場合は、財務省への届け出は不要とされた。 アメリカ議会では数年前から(国家安全保障上の懸念に基づく)対中投資規制の議論が始まり、それが前出の大統領令につながった。
一部の議員は財務省に対し、新規制の速やかな策定と実施や、規制範囲の拡大を求めていた。しかし現実には、技術的な区分の難しさや投資形態の複雑さがあり、最終規則の発表まで1年余りの時間を要した。 ■大手VCは中国事業を分離 「アメリカの国家安全保障を脅かす者による重要技術の開発に、アメリカの投資が利用されることがないよう、焦点を絞った具体的な措置を講じた」。財務省で投資安全保障を担当するポール・ローゼン次官補は、最終規則の発表声明の中でそう述べた。
一方、対中投資規制の影響を受けるアメリカの投資会社の多くは、すでに中国事業の「切り離し」を進めている。対中投資部門を別会社に移し、ブランド名も変える手法が主流だ。 例えば大手ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタル、GGVキャピタル、ブルーラン・ベンチャーズ、マトリックス・パートナーズなどが、これまでに中国事業の切り離しを完了した。 (財新記者:杜知航) ※原文の配信は10月29日
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