<高校ラグビー>139-0の大差試合が投げかけた問題点とは?
第96回全国高校ラグビー大会の3日目が30日にあり、過去優勝5回の東福岡高が大会新記録となる139得点をマーク。シード校のため初陣となった2回戦で、浜松工高を圧倒した。会場である大阪・東大阪市花園ラグビー場・第1グラウンドの得点板には、「139―0」と刻まれた。 前年度は4強に終わった通称「ヒガシ」は、かねてから競技力に直結する鍛錬に注力してきた。トレーニングによる肉体強化、実戦形式練習によるタイムマネジメント力のアップなどを通し、現日本代表の布巻峻介(パナソニック)ら多くの名選手を輩出してきた。 さらに高校日本代表候補を11人も擁する今季は、優勝候補の筆頭格とされた。事実、春の全国選抜大会、7人制ラグビーのアシックス杯の2冠を手にしている。誤解を恐れずに言えば、2回戦はどのチームが当たっても苦戦必至だった。 これまでの記録は、80回大会で佐賀工高が砺波高戦で挙げた137点だった。このような大差のゲームがあると、外部からは大会そのものの意義などが問われるかもしれない。ただ、今度の結果を大会の問題とするのは早計である。 この日の2回戦を勝ち上がった16強を地域別に分類すると、北海道・東北は0チーム、関東・甲信越は3チーム、東海は1チーム、北陸は2チーム、関西は6チーム、中国・四国は2チーム、九州・沖縄は1チームとなる。 中国・四国の一角である島根県の石見智翠館高もメンバー25名中17名が大阪府の選手としているなど、関西勢の優位は明らか。加えて、東福岡高のメンバー25名中23名が地元選手。福岡県のラグビースクールの分母の大きさは、毎年花園に3チームを輩出する大阪に匹敵する。 かたや浜松工のある静岡県は、トップリーグの強豪であるヤマハがラグビースクールを運営するなど地道にすそ野を広げつつあるが、いわば「ラグビー立県」とされる福岡県や大阪府とは積み重ねてきた歴史に違いがある。 ちなみに昨年度の花園で静岡県代表だった静岡聖光学院高は、人口最少の鳥取県から参加した倉吉北高に105―0で勝利。今大会の鳥取県代表となった米子工高は「ヒガシ」に屈した浜松工高に3-59で敗れている。米子工高のメンバーに、入学前のラグビー経験者はひとりもいなかった。 全国高校ラグビー大会でワンサイドゲームが起こる背景には、かような普及格差がある。まして少子高齢化の現代社会にあって、花園予選に出場するチームは1991年が1490校だったのに対し、2014年は786チーム(合同チームを含む)に減少。各都道府県から1校以上が出場する全国大会の意義を問う以前に、全国的な競技人口を底上げする施策が求められるのだ。