卵巣嚢腫と子宮外妊娠の手術で、自然妊娠は無理。苦難の末に、体外受精で妊娠した妻が下した決断とは
2022年4月より不妊治療の保険適用が開始され、不妊治療や体外受精に踏み切る夫婦は増えています。しかし、治療の末に妊娠・出産できる夫婦ばかりではありません。苦労の末に子どもをあきらめなくてはいけないケースも少なくありません。 【データ】男性・女性の未婚率の推移、30~40代女性の結婚願望は? 子宮外妊娠からの体外受精と死産という壮絶な体験を通して、妊活がうまく行かなかったとき、夫婦が「乗り越えなくてはいけない壁」について考えてみます。
卵巣嚢腫で卵巣が一つになるも無事に妊娠、でも……
千葉県在住の優華さん(仮名・45歳/図書館司書)は、25歳のときに卵巣嚢腫が見つかり、手術で右側の卵巣を切除。妊娠が難しくなるのでは?と不安でしたが、医師から「卵巣は一つでも問題なく妊娠できる」と説明を受けてホッとしたといいます。 28歳で元夫(当時29歳)と結婚後に初めて妊娠しますが、2か月後に流産してしまいます。しかし、流産の処置後も妊娠反応が続いていました。そこで、優華さんが通うクリニックに月一で医大から来ていた先生に診てもらうことに。 手術後まだ間もなかったため、麻酔をかけられずにお腹の中を見せることになり「死ぬほど痛かった」と優華さん。さらに追い打ちをかけたのが「子宮外妊娠かもしれない」という医師の言葉でした。
可能性があるなら、と体外受精へ
子宮外妊娠で、左の卵管と子宮の境目に胎児が着床しているのがわかり、左の卵管を切除することになりました。卵巣と卵管は両方そろっていて妊娠が可能になります。優華さんは右の卵巣と左の卵管がなくなったため、自然妊娠はできなくなりました。 しかし、「体外受精をすれば子どもは授かる」の言葉に希望を見出した優華さん。もともと、何が何でも子どもが欲しいとは思っていなかったそうですが、「可能性があるならチャレンジしたい」と感じたといいます。 夫に話すと、「優華がそうしたいのなら」と了承してくれました。
妊娠するための選択肢として残されたのが、体外受精
卵巣で作られた卵子は卵管に取り込まれ、そこへ精子が到着して受精。受精卵は卵管を通って子宮へ到達して着床します。何らかの原因で子宮以外の場所に着床して妊娠が継続することが「子宮外妊娠」です。優華さんの場合は、子宮と卵管の境目に着床していました。 不妊治療にはさまざまな方法があります。妊娠しやすい排卵日に受精するために、医師の指定した日に性交する「タイミング療法」。精子を子宮の奥に注入して、そこから先は自然妊娠を目指す「人工授精」。卵巣から卵子を取り出し、体外で受精させた受精卵を妊娠しやすい時期に子宮に戻す「体外受精」などです。 卵管切除や機能低下で、精子が卵管を通ることができない場合は、体外授精をして受精卵(胚)を子宮に移植(胚移植)することになります。優華さんはこのケースとなります。