「合理的にいうと料理ってする必要がない」スープ作家・有賀薫さんがそれでも料理をする理由
「好き」と「楽しい」が大きな原動力
小竹:スープ作家を続けている原動力はどういったことですか? 有賀:何かを作る仕事をしたいという思いです。しかも、好きな料理で喜んでもらえたら、それはすごくうれしいとも思います。「好き」と「楽しい」が大きな原動力になっています。 小竹:自分の思いなどをどういった方に伝えていきたいですか? 有賀:スープを軸にして発信したときに、家庭と仕事を両立させながら毎日料理を作ることを大変に感じている人が多くいることに気づきました。私も同じ思いだったので、この状況を変えなくてはみたいな使命感が芽生えました。 小竹:なるほど。 有賀:私も仕事と家庭の両立で大変な思いをしてきたからこそ伝えられることがある。楽しいと同時にそういった気持ちも大きくて、その2つを両輪として転がしていると自己分析しています。 小竹:クックパッドの「毎日の料理を楽しみにする人を増やす」というコンセプトもまさにそれで、料理はクリエイティブなものだけど、毎日毎日になった瞬間に作業になってしまう。それをうまく変えていきたいんです。 有賀:楽しいといっても、料理を毎日作るのは、ディズニーランドで遊ぶみたいな楽しさとは質が違う。どちらかというと仕事に近い。仕事は達成感などはあるが、手放しで楽しいかというと、それは違いますよね。 小竹:違いますね。 有賀:大変なこともある中で成果が出たときに楽しいと感じる。家の料理はそれに近い気がします。ただ、家と仕事の大きな違いは、家はお客さんも固定だし、環境も固定だし、変えられない部分がすごく多い。 小竹:お金も出ないですしね(笑)。 有賀:頑張ったからといって予算が大きくなるわけでもない(笑)。だから、そういう部分にストレスが溜まったり、「私はこんなにやっているのに夫はやってくれない」みたいなコミュニケーションの問題があったりもするのでしょう。 小竹:評価がないから、自分でどう気持ちの折り合いをつけていくかというのが大事かもしれないですね。 有賀:楽しさとしては仕事と質が似ているけど、仕事ではない。そこがややこしくてわかりにくいから、みんなが悩むところなのでしょうね。