大型連休中の旅行者は前年比1.6倍―“久しぶりの海外”を健康的に楽しむには
COVID-19(新型コロナウイルス感染症、以下「新型コロナ」)の流行が落ち着いてきたことで、今年の大型連休には久しぶりの海外旅行を計画している人も多いことでしょう。しばらく旅行をしていない間に、海外での感染症対策など健康面の注意点を忘れてしまった方も少なくないと思います。そこで、今回は海外旅行を健康的に楽しむ方法を再チェックしてみます。【東京医科大学病院渡航者医療センター客員教授・濱田篤郎/メディカルノートNEWS & JOURNAL】
◇人気の旅行先はアジア
JTBの発表によると、今年の大型連休中は、海外旅行者数が前年比67.7%増の52万人に上ることが予測されています。新型コロナの流行により、過去4年間は海外旅行に出かける人が大幅に減っていましたが、ようやく復活する気配です。ただし、円安が進んでいる影響で、短期間の旅行が売れ筋になっており、人気の滞在先には韓国、台湾、東南アジアなどがあがっています。 コロナ禍前の2019年までは、毎年1500万~2000万人の日本人が海外に観光や仕事で出国していました。これは日本国民の6~8人に1人が、毎年1回は、海外に出かけていた数になります。海外旅行が日常的な行動になっていたわけで、海外滞在中に健康面でどのような注意をするかも心得ていたと思います。 しかし、新型コロナが流行した4年間で、こうした知識も薄れてきている人が多いのではないでしょうか。特に今回の大型連休で人気のアジア地域は、感染症のリスクが高いため、それに関する十分な予防対策が必要になります。
◇飲食、蚊、動物に注意
飲食物からかかる下痢症はもっともリスクの高い感染症です。大腸菌が原因になることが多く、トイレから2~3日出られないほどの下痢になることもあります。予防には加熱した料理を選ぶことや、水はミネラルウォーターを飲むなどの注意をしてください。生水から作られた氷も危険です。 海外滞在中に下痢症を起こした場合、まずは水分補給をし、下痢の回数が多いようなら下痢止めを服用しましょう。旅行前に薬局などで下痢止めを購入し、持参することをおすすめします。ただし、血便や高熱を伴う下痢の場合は、下痢止めを服用せずに医療機関を受診してください。 東南アジアでは蚊に媒介されるデング熱にも注意が必要です。この地域では現在、デング熱が大流行しており、都市部やリゾート地でも多くの患者が発生しています。デング熱を媒介するヤブ蚊は昼間に吸血するため、蚊の多い場所に昼間立ち入る際は、虫除けの薬を皮膚に塗るなどして予防します。旅行前に虫除けの薬も購入しておきましょう。 デング熱は感染後1週間ほどで、発熱や発疹などの症状がみられます。旅行中に感染すると、多くは帰国後の発病になるので、症状が出たら早めに国内の医療機関を受診してください。 狂犬病も東南アジアなどで流行しており、前回の本コラムで、発症すると致死率が100%になることを紹介しました。予防対策としてはイヌ、ネコ、サルなどの哺乳動物に近寄らないことです。もし、こうした動物にかまれたりひっかかれたりした場合は、傷を水で洗ってから、至急、医療機関を受診し、発病を抑えるためのワクチン接種を受けてください。