「入江君に読んで欲しくて描いた」騒動後初対談でカラテカ矢部が明かした本音
よかれと思って……
矢部 行動力の話に通じるけど、入江君は、誰かをお祝いすることが好きだよね。 入江 好きだな。 矢部 動物に餌をあげるのも好き。 入江 ずっとあげちゃう。 矢部 人との繋がりもすごく大事にするよね。アフリカロケのコーディネーターさんとも、20年以上経った今でも仲良しだし……。僕、今回の『プレゼントでできている』では、プレゼントの危うさも描きたかったことの一つで。 入江 危うさ? 矢部 「プレゼントをあげる」って、自分の気持ちを伝えることでもあるんだけど、それが押し付けになってしまったり、はたまた暴力的なものになってしまったり……。あげる相手への影響についても考えないといけないなって、描きながら思い至りました。よかれと思ってあげた「プレゼント」が、のちのち、誰かに迷惑をかけることになったり……。 入江 わしや! わしやないかそれ!! 矢部 いやいやいやいや……。いろいろね、本当にいろいろな、ね……。 入江 まあそうだよな……。よかれと思って自分がやったことが、結果、たくさんの方に多大なご迷惑をかけてしまって……。本当に申し訳ないと今も反省の日々です。先輩や後輩が喜ぶ顔が見たいって、「プレゼント」に対して盲目になってしまっていたんだと思う。動物に餌をあげるにしても、「無闇に餌を与えないでください」って注意書きがあったりするもんな……。難しいな、プレゼントって。 矢部 そうだね、適度な加減って何においても難しいよね。 入江 でもあの騒動の時、色々な方が色々な言葉をかけてくださった。すぐに離れていった人もいたけど、ずっと信じてくれる方もいて……。そういう、優しいのはもちろん、厳しい「言葉」というのも、プレゼントの一つだなって今話していて思った。そういう言葉は当然忘れていないし、いまだに助けられてもいるし。 矢部 「言葉」ってお金では買えないプレゼントだよね。それに、言った方は何気なく発しているから、覚えていないことも多い。 入江 それってすごいよな。 矢部 僕は最近、お金や数字で割り切りすぎる世の中の風潮に、殺伐さを感じてしまっているから、何かちょっと、そんな凝り固まっている思考を、数値化できない「プレゼント」というものがほぐしてくれるんじゃないかとも考えているんだ。 入江 これは、言おうかどうか迷うんだけど……。 矢部 なに? 入江 自分が吉本から契約を解消された時、矢部がSNSに相方としての謝罪の言葉を投稿して……。 矢部 ああ、入江君がご迷惑をおかけして申し訳ありません、っていうのね。 入江 その時、「相方であり友である入江慎也が」って書いたんだよな。それに、「今後もカラテカの矢部太郎です」って……。あれは自分にとって、本当に、特別な「プレゼント」だった。 矢部 ……。 入江 確実にあの言葉に救われたし、自暴自棄になりそうな時、踏みとどまらせてくれるものだなって思っている。 矢部 そんなこと……書いたっけ? 入江 覚えてないフリするの、めちゃくちゃ下手だな! (笑)。 矢部 (笑)。コンビは別に、今も解散してないしね。 入江 さっきの撮影では、コンビでの立ち位置をお互いに忘れていたけどな(笑)。そういえば、最近、ご飯を食べに行くとお前が、饅頭とかレモンティーとか手土産を持ってくるだろう。今までそんなことなかったのに、なんでだ? 「僕、プレゼント芸人です」って、この本が出る伏線だったのか? 矢部 ちょっと! 営業妨害だよ! (笑)。あと、レモンティーじゃなくてハーブティーね。 入江 どっちでもいいわ! (笑)。今の清掃の仕事のことになるけど、お客様に少しでも楽しんでもらえるように「作業終了時のトークは0円」って謳わせてもらっていて。自分なりにできることで、ご迷惑をおかけしたことや、これまでに頂いた「プレゼント」への恩返しをしていきたいなと思っている。 矢部 そうだね。良いことも悪いことも含めて、どんな「プレゼント」で自分自身ができているかを、僕は描きながら確かめていく感覚があったから、入江君にもそう感じてもらえて嬉しい。 入江 この漫画を読んで、最近疎遠だった人に連絡する人も多いんじゃないかな。 矢部 読んだ方それぞれにとっての「プレゼント」を思い出してくれたら良いなぁ。そして、自分が自分であることを受け入れて、大切にしてくれたら、なお嬉しい。 入江 今日はメシ食べる時は一切しない話ができたな。 矢部 これからはこういう話もしようよ! 入江 イヤだよ(笑)。 [文]新潮社 協力:新潮社 新潮社 波 Book Bang編集部 新潮社
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