『コンスタンティン』キアヌ・リーブスの複数の魅力を合流させ、カルトな代表作に
『コンスタンティン』あらすじ
この世に存在しないものが見えることに苦悩し、カトリック教徒なのに自殺を図ったため、天国へ行けなくなったジョン・コンスタンティン。彼は神に認めてもらうべく、悪魔祓いを生業としていた。ある日、少女を救うため悪魔祓いに向かったコンスタンティンだが、行き来できないはずの人間界に入り来もうとする悪魔と対峙したことで、天国と地獄のバランスが崩れようとしていることに気づく。
アクション大作と屈折した暗い影の役を行き来
キアヌ・リーブスのキャリアを振り返った時、大きく2つのパターンを見つけ出すことができる。ひとつは、アクションスターとしての系譜。『ハートブルー』(91)や『スピード』(94)、『マトリックス』(99)を経て『 ジョン・ウィック』(14)へと至る。キアヌ自身、ブルース・リーや千葉真一をリスペクトしていただけあり、過酷なスタントにも自ら真摯に挑むその姿勢が作品に輝きを与えてきた。そしてもうひとつが、どこか屈折した感情を抱えていたり、暗い影を背負ったりしているキャラクターの系譜。男娼役の『マイ・プライベート・アイダホ』(91)、悪魔に誘われる弁護士役の『ディアボロス/悪魔の扉』(97)、ストーカー殺人鬼役の『ザ・ウォッチャー』(00)、暴力夫役の『ギフト』(00)といった、特にキャリアの初期から中期に、隠れた傑作を見つけることができる。キアヌもそうしたキャラを好んでチョイスした節(ふし)もある。そして、その両パターンをうまく合体させた代表作が『コンスタンティン』(05)ではないかと感じる。 アクションヒーローでありながら、そのイメージは正義というより、屈折感、やさぐれ感、そして魔性の魅力が際立つのが主人公のジョン・コンスタンティン。キャラクターとしては“暗い影”のグループに属しながら、アクションスターの見せ場もが数多く用意されており、つまりこれは、キアヌの持ち味の両面が究極に合体した理想型と言っていいかもしれない。 そしてもうひとつ、このコンスタンティン役がキアヌの志向を表している要素がある。それは原作がコミックという点。DCコミックの「Vertigo」レーベルで1989年に誕生したシリーズ「ヘルブレイザー」が、映画化に向けて動き出し、その脚本にキアヌが惚れ込んで主演が決まった。ハリウッドのトップスターには、ニコラス・ケイジをはじめ“アメコミおたく”が多いが、キアヌもその一人。彼の場合、自らコミックも手がけており、「ジャスティス・リーグ」のコミックアーティスト、マット・キントと共同で「BRZRKR」というコミックシリーズを発刊。8万年生き続ける戦士が活躍する壮大な叙事詩で、その主人公の風貌はキアヌにそっくりだ。自身がコミックの世界に入り込むという、ひとつの夢を達成したわけである。その「BRZRKR」は映画化のプロジェクトが進み、キアヌは実写で主演、アニメ版では声を担当することが決まっているが、現時点(2024年)では実現に至っていない。アニメも大好きなキアヌは、日本の「獣兵衛忍法帖」が実写化される際に主演を任される話もあった(こちらは完全に中止)。そんなキアヌなので「ヘルブレイザー」の映画化は、夢のようなプロジェクトだったのである。