“ミスター・ドラゴンフライズ”朝山正悟がホームにお別れ…華麗な3ポイントで締めくくる
ホーム最終戦はスタメンでコートに立つ
朱色に染まった広島サンプラザに拍手が鳴り続いた。一人ひとりに感謝を伝えるように丁寧に挨拶をして周り、最後に深くお辞儀をして、溢れ出た涙を拭って、朝山正悟はホームコートを後にした。 広島ドラゴンフライズは5月4、5日にB1最終節で琉球ゴールデンキングスをホームに迎えた。チャンピオンシップ(CS)進出がかかったレギュラーシーズン最後の2試合。第1戦は序盤こそリードを許したが、堅守で琉球の攻撃を抑えて69-59で競り勝ち、2シーズン連続のCS進出を確定させた。第2戦は、挽回したい前年王者と激しいフィジカルバトルの末に80-89で敗戦。だが、同日に千葉ジェッツも負けたため、広島はワイルドカード上位でのCS進出が決まった。 今シーズン限りで引退する朝山にとって、9年過ごした広島で現役最後の試合。第1戦は出番がなかったが、ベンチで誰よりもチームを鼓舞し続けた。CS進出が決まった試合後の会見では、「明日がホームで最後なので、いろんな思いをぶつけたい。まずはチーム最優先で、その中で自分のラストとして感謝のプレーを見せたい。最後はみなさんが期待していると思うので、3ポイントを1本ぐらい決めたいなと思います」と笑顔で意気込んでいた。 第2戦、朝山はスタメンでコートに立ち大声援を受けながら、ホームで約11分間のラストダンス。シュートを打てずに時間が過ぎたが、試合最後のプレーで朝山がパスを受けると、厳しかった琉球の守備もこのときばかりは緩んだ。アリーナ全員の期待を背負い、代名詞の3ポイントシュート。きれいな放物線を描いてゴールに吸い込まれた瞬間、大歓声が弾けた。 広島でのラストショットを決めて有終の美を飾った朝山は、試合後に行われた引退セレモニーで感謝と誇りを口にした。 「9年間たくさんの思い出が詰まったサンプラザでの試合は今日が最後になります。これまで支えてくださったみなさん、本当にありがとうございました。特に何にも取り柄がなかった自分がこうして20年ものキャリアを続けてこられたことも、数え切れない苦しい思いや、つらいことを乗り越えられたことも、みなさんの出会いやつながりがあったからこそだと思っています」 「自分が何を残せたかわかりませんが、バスケットボールを愛し、このコート上では真っ直ぐ向き合ってきたこと、それだけは胸を張って言えます。僕はこの広島という地で、このチームでユニフォームを脱げることを誇りに感じています。バスケットボールを通して、これだけのたくさんの方々に出会えたことは自分の財産であり、自分の競技人生に何一つ悔いはありません。僕はこの広島ドラゴンフライズが、バスケットボールが、大好きです。これまでどんなときも支えてくださった皆さま、ずっと応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました」