R55型MINI ジョン・クーパー・ワークス クラブマンにモータースポーツの血統を感じた【10年ひと昔の新車】
サーキットでその速さをいかんなく発揮
2010年10月、MINIを愛するオーナーに向けたサーキットイベントが千葉・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された。Motor Magazine誌もそのイベントに参加。R55型MINI ジョン・クーパー・ワークス クラブマンの試乗テストを行っている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(Motor Magazine 2011年1月号より) 【写真はこちら】袖ヶ浦フォレストレースウェイでのサーキット走行の後、一般道でも走りを確認することができた。(全6枚)
第1コーナーのブレーキング開始地点では157km/h、第3コーナーの手前では160km/hを軽くオーバーする。袖ヶ浦フォレストレースウェイで、MINIジョン・クーパー・ワークス(JCW)クラブマンは速さを見せつけた。 JCWのスポーティさは、過激だと思っていたMINIクーパーSを上回る。2010年5月にバルブトロニック付になったMINIクーパーSのエンジンだが、JCWはバルブトロニックのない高回転型のエンジンを継承している。 クーパーSは235kW(184ps)/5500rpm、240Nm/1600-5000rpmだが、1.6L 4気筒ターボチャージャー付という点では同じものの、JCWは155kW(211ps)/6000rpm、260Nm/1850-5600rpmと、パワーとトルクの大きさが目立つ。 高回転型エンジンだから、サーキットではそのパワーが活かせる。サーキットでの速さは、エンジンの仕事量(馬力)で決まるからだ。 直線の終わり、つまり次のコーナーの手前でのスピードの高さは、その前のコーナーの立ち上がりスピードに大きく影響される。コーナー出口のスピードがその直線の最高スピードを左右するからだ。JCWは最終コーナー出口のスピードも速い。 最終コーナー入り口でのブレーキングからターンインに移るときのノーズの向きの変え方はとてもスムーズだ。FWDだがフロントの重さを感じることはなく楽に向きを変える。クリッピングポイントにちょっと盛り上がった縁石があるが、そこを右のタイヤで軽くタッチするようにラインを選ぶ。ここではアクセルコントロールが有効で、右足の踏み込み具合でラインのコントロールができる。やはりハンドルを戻している方が加速力は鋭いから、クリッピングポイントは奥目にとって道幅いっぱいに使ってアウト側ギリギリまで直線的に加速できるようにする。 グリップの良い205/45R17 84Wのコンチスポーツコンタクト3もコーナリングスピードの高さをバックアップしている。最終コーナー出口のスピードは97km/h、3速4500rpmからだからストレートでは最大トルクの美味しい加速力を得られる。 「く」の字に曲がっている第2コーナーではJCWのじゃじゃ馬ぶりが露呈する。3速で第1コーナーを立ち上がり、第2コーナーでハンドルを切っている真っ最中に4速にシフトアップしなくてはならない。そこでシフトアップするとトルクの抜けにより急にハンドルが効き内側に入り込み、シフトアップが完了すると今度は急にアンダーステア傾向が強く出る。その変化はかなり急激なのでハンドル修正も忙しい。 そこで第2コーナーでハンドルを切り始める手前でシフトアップしてしまうとスムーズに走れる。レッドゾーンが始まるのが6500rpm、最高出力が6000rpmで発生するのだが、もっと手前の5500rpmでシフトアップしてしまうのだ。このことにより第2コーナーのコーナリングがスムーズになり、第3コーナー手前では1600km/h超えが楽にできるようになった。 第3コーナーでは第1コーナー以上にハードなブレーキングが要求される。ここではJCW用ブレンボ製の4ポッドブレーキキャリパーがしっかりしていてコントロールしやすいブレーキで安心だった。 ブレーキングしながらハンドルを切ると、カート感覚でオーバーステア傾向になったかのようによく曲がる。一般道ではその片鱗も見せず安定したままだったが、サーキットでのハイスピード、ハードブレーキングでは高度なテクニックを要求される。しかし腕があれば、それをうまく使ったドライビングが楽しい。 今回の袖ヶ浦はショートカットのルートだったので、舗装にうねりのあるところを通過しなくてはならなかった。そこをアクセル全開で通過すると接地圧の変化によってDSCが作動して加速力が鈍ってしまうが、横滑りOFFのスイッチを押すとアクセルペダルが優先になりタコメーターの針は上下するものの加速力の鈍化はなくなった。路面のうねりが激しいサーキット走行ではDSCオフが有効だ。