男子110mハードルの村竹ラシッドが快記録でパリ五輪代表入り 3年前のフライング失格からの「解放」と日本人初12秒台への期待【日本選手権4日目】
村竹自身は不満を示したが、五輪では日本人が誰も成し遂げていない決勝進出が、十二分に期待できるパフォーマンスだった。 ■フィニッシュ後に喜ばなかった村竹 フィニッシュ後の村竹は淡々とした表情だった。勝利の雄叫びも、喜びを爆発させるポーズもなかった。 「ここがゴールではなく、ここからがスタートなので、声を出したい気持ちもありましたが喜びは抑えました。やっとスタートラインに立ったと自分では思っているので、その意味も込めて声は抑えました」 うつむき加減に数歩歩いた後に、ひざまずいて空を見上げた。表情はいっさい崩さなかった。 「ホッとしたっていうのが正直なところでした。ちょっと空を仰いだところもありましたけど…そんなところです」 日本人初の12秒台を出せていたら、また違った行動になった可能性はある。だが今回は3年前のフライング失格以降、心のどこかに引っかかっていたものから解き放たれた心境だったのだろう。 「東京五輪を逃し、そこからの3年間、自分の無力さだったり、世界の壁だったり、負けたことの屈辱だったり、そういったものがパリ五輪への執念になって、ここまで動かしてくれたと思っています。ようやくその思い、自分の無力さから少し解放されて、やっとここから始まるな、と思いました」 3年前の日本選手権決勝での失格が、成長の大きな糧となったのは事実だ。フライングに対して神経質になることもなくなっているという。 「3年間の積み重ねが、自分の気持ちに余裕を持たせてくれています。そこにもう不安はありません」 引きずっていた部分がなくなったことで、村竹はまた別の成長ができるのではないか。 ■世界と戦うために中盤以降のスピード維持を 前述のように村竹はすでに、今大会決勝で12秒台を意識していた。出すことはできなかったが、「ハードルに最初からぶつけても13秒0台が出ました。アベレージは上がっている」と実感できた。 「1台目、2台目、3台目と加速につながる部分はハードルに当てず、スムーズに加速していきたいですし、後半は自分の(武器である)加速力を活かせるハードリングにできたら、と思います」