広岡達朗「日本は大リーグの高額複数年契約を真似するな!」10年総額1015億円の大谷翔平は「契約年数の半分もつのか?」
原則は1年更新だ
日本野球の将来を憂えるとき、私が主催した1988(昭和63)年の「日米ベースボールサミット」を思い出す。日米野球の親睦と日本の野球技術の向上を目指して開催したものだが、特別講師に招いた大リーグの球団幹部たちから聞かされたのは「日本は大リーグのような高額な複数年契約だけは真似しないほうがいいよ」という忠告だった。 この忠告が36年後に象徴的な現実となったのが、10年総額1015億円の大谷と12年総額471億円の山本のドジャース移籍だった。 私はこの耳を疑うようなビッグニュースに驚き、連載しているコラムに書いた。 10年以上もの複数年契約はおかしい。それだけの期間、野球選手がピークの状態を保つのは不可能だ。いつも私が言うように、人間は年齢とともに衰える。大谷は29歳、山本は25歳。2人とも契約年数の半分ももたないと思う。 (中略) アメリカの専門家はルールを自分たちの都合のいいように変えていく可能性がある。現に大谷の契約内容は、オーナーか編成本部長のどちらかが現職を退いた場合、途中で大谷側から契約を破棄できるオプトアウトが盛り込まれているという。そんな契約は契約と言えるだろうか。 アメリカは民主主義の国である。多民族国家だけに、平等でなければクレームが出る。戦う前から、このチームが勝つだろうと見透かされるような選手補強もしてこなかった。開幕の時点で横一線でなければ観客が来ないからだ。今回の2件の契約は、そうした戦力均衡の精神が崩れたことを意味している。 (「廣岡達朗コラム『大谷翔平、山本由伸……10年以上もの複数年契約はおかしい』」週刊ベースボールONLINE、2023年12月29日 https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=101-20231229-10) 私はかねがね、勝負の世界であるプロ野球は1年契約が原則で、基本契約以上の活躍をしたらいくらでもボーナスを上乗せする出来高払いにすればいいと思っていた。だから先述の「日米ベースボールサミット」の大リーグ幹部が言うように、複数年契約には反対だ。
広岡達朗