アニメ×パチンコが生む“相乗効果” 『リゼロ』『エヴァ』『アクエリ』のヒットを紐解く
アニメ作品は、テレビ放送や映画公開が終了したとしても、それは“終わってしまった作品”ということにはならない。その理由として、ひとつにNetflixやU-NEXTのような動画配信サイトで観られるということがある。そしてもうひとつ、キャラクター人気が衰えない『新世紀エヴァンゲリオン』や、10月からテレビアニメの第3期がスタートする『Re:ゼロから始まる異世界生活』のように、パチンコやパチスロといった遊技機の上で作品が展開され、途切れない存在感を持ち続けられることがあるからだ。 【写真】11月5日にパチンコ化が決定しているアニメ『転スラ』 8月30日より上映が始まった『Re:ゼロから始める異世界生活 劇場型悪意』は、長月達平のライトノベルを原作したテレビアニメの第3期を先取りし、90分ある第1話を先に劇場で見せようとしたものだ。上映に向けて予告編が展開される中、作品のファンでない人でもどこかで見たことがあると感じたかもしれない。たとえばパチンコ店の店頭。2023年11月にパチンコ機「e Re:ゼロから始める異世界生活 season2」が導入された時に、宣伝のポスターを見たりネットのPR動画を見たりして関心を持ち、実際に遊んだことがあったかもしれない。 長く続くシリーズの第2期を題材にした内容は、「強欲の魔女」と呼ばれるシリーズでも強い存在感を持つエキドナが登場していて、インパクトのある「強欲」というキーワードを打ち出した演出で遊ぶ人の興味を惹く。ほかにも愛らしいエミリアに尊大そうなベアトリス、そしてかわいいレムといった常連キャラが、それぞれの属性を現すような演出で登場して関心を誘う。アニメより先にパチンコ機からファンになった人が、『劇場型悪意』や第3期の宣伝に触れて作品に入って行く現象も起こるかもしれない。 ●パチンコ業界に影響を与えた『新世紀エヴァンゲリオン』 作品のファン以外に存在を知らせて引き込むという、アニメとパチンコの関係を形作った作品に、『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)がある。2004年に登場した『CR新世紀エヴァンゲリオン』から始まって、20年にわたって作り続けられている『エヴァ』のパチンコ機。9月13日から東京・六本木ミュージアムで始まった『EVANGELION CROSSING EXPO -エヴァ大博覧会-』の会場には、歴代の17機種が並んで、商品化の中でもひときわ高い存在感を持っていることを見せつけた。 作品自体が今も人気の最先端を行くだけに、商品化として順当な展開のように見える。もっとも、2000年代に関してはある意味で人気の端境期にあって、パチンコ機が世間における『エヴァ』の認知度を引っ張ったところがある。売れ行きも好調だったようで、そこから改めて「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のリブートが始まったようなところもある。2021年に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開された後は、グッズ類とともにパチンコ機が『エヴァ』という作品を世の中に顔を出すための窓口となっている感じもある。そこで支持が集まり続けた結果として、2007年のリブートと同じような現象が起こるかどうかに、関心を抱いているファンも少なくないだろう。 ●パチンコ機を入り口に多くのファンを生んだ『創聖のアクエリオン』 遊技機となったことで、『エヴァ』のように存在感をアニメファン以外に見せた作品に『創聖のアクエリオン』がある。“知る人ぞ知る”作品に留まったアニメを観ていた濃いファンと、パチンコ機として新しく触れた人のどちらが多いかという議論ができそうなくらい人気が広まって、『アクエリオンEVOL』のような続編アニメを送り出す力となった。最新の『想星のアクエリオン Myth of Emotions』が作られている背景には、遊技機がつないだ認知度があると言える。 『創聖のアクエリオン』が遊技機と相性が良かったことも、アニメを知らないパチンコファンに受け入れられた背景にありそうだ。ド派手なロボットのバトルがあって、ケレン味たっぷりの演出があって、「合体」という強烈なキーワードもある。それらを遊技機に取り込んで、ドキドキさせたり驚きをもたらしたりして引きつけた。「エヴァ」の遊技機が「暴走」というキーワードで注目を引いたところと似通っている部分だ。