中国経済が「想像以上に悪化」している…国民はもう政府の政策に従わず、米中抗争どころではない「半死状態」に
国内経済の失策と衰退が中国を劣勢に立たせている
中国はしばしば、「米国を筆頭とする西側陣営が中国を貶め圧力をかけるから様々な紛争が起きるのだ」と言う。実際には、中国の多くの内部対立と不均衡がより大きな原因であり、西側諸国がその状況を利用しているだけである。 まず、近年の中国の経済政策は、国内経済の停滞、あるいは衰退を招いていることが挙げられる。例えば、「国進民退」(国有企業が民営企業より優遇されてシェアを高める)がある。政府は国有企業を保護し、市場を拡大・コントロールするだけでなく、大手民間企業を標的にし、罰則を加え、その市場の発展を制限している(「有力な民間企業のオーナーを標的とする」こと。ジャック・マーが典型例)。 当局は、民間企業が「資金が豊富で鼻息が荒く」、「国家に匹敵する」ことになりやしないかと懸念しており、これが民間の中小企業に対してまでも厳しい政策(融資のハードルを上げるなど)につながっている。この数年、民間経済が半死状態になってようやく政策が若干緩和された。 国のこうした経済政策は国民の暮らしを急激に悪化させ、暮らしを守るために国民はもはや政府の政策を信頼せず、従わなくなり、出生数の増加を促す政策にも応じなくなっている。また、不動産市場を活性化させるための不動産購入制限緩和政策によっても明らかな改善は見られていない(以前、全国各地で野放図にマンションが建設されたため、需給バランスが崩れ、住む人のいない「ゴーストタウン」が数多く出現し、現在に至っている)。
外資が中国から逃亡することの意味
また、政府は内需を刺激するために消費を奨励しているが、国民は(政府が約束した社会保障は引き締められ、国民の公的積立金も凍結され受け取りが困難になるなどして)、むやみやたらに消費しようとはせず、逆に国民の貯蓄率の上昇をもたらしている。2020年、コロナ禍が本格化する前は40%だったのが、去年は50%近くに上昇している。 最近のこととしては、中国は今年年初から「辛さを抑える」(多くの政策を緩和する)ことに着手し、年央には経済再生のための「コンビネーション・パンチ」(包括的な市場救済戦略)も打ち出した。しかし、最近公表された今年第1~第3四半期のGDPを見ると、31省・市のうち24が目標を達成できておらず、GDP総額で国内トップの広東省でも3.4%アップにとどまった。 中国は長年、経済の柱として海外投資と対外貿易に依存してきたが、近年はその双方とも自ら招いた理由で困難に直面している。例えば銀行は中小企業へのローンを出し渋って市場は萎み、輸出利益が減少し、内需不足で倒産の波が起こっている。中国経済のファンダメンタルズの変化により、外国投資家が利益を得る機会は大幅に減少しており、加えて近年、中国の国家安全に対する意識は際限なく拡大しており、本来であれば国家間でそれほど問題にならないような国家安全のための措置が、外国からの投資を妨げるネックとなり、外国企業の大幅な撤退をもたらしている。 トランプの当選後、コーヒーマシンで知られるオーストラリアの有名な家電企業のブレビルなど、まだ様子見していた一部の外国企業は即座に撤退を決めた。ここに込められたメッセージは、中国と米国の対立が激化し、米国が中国製品に追加関税を課すことが中国に投資した企業にも直接影響するだろうと各投資企業が予想しているということだ。 こうした様々な状況はすべて、中国の米国に対する反撃能力を弱めることを示していよう。 翻訳・ 大久保 健 アメリカの圧力に、ますます劣勢になる中国。このことは近隣の東アジア諸国に何をもたらすか。後編「中国企業すら逃げる~いま急速に進んでいる中国から香港・東京・シンガポールへの『資本流出』のワケ」で検討してみる。
劉 鋭紹(評論家)