『ホテル・ルワンダ』の監督が描く、ホロコーストの約20年前に起きた大虐殺
『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージ監督が、20世紀最初に起きた大虐殺を映画にした。2月3日から公開される『THE PROMISE/君への誓い』は、ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の約20年前に実際に起きたオスマン帝国(現:トルコ共和国)による150万人が犠牲になったアルメニア人大虐殺を描いている。 故郷に妻を残し、コンスタンティノープル(現:イスタンブール)で医学を学ぶアルメニア人青年ミカエル(オスカー・アイザック)とフランス帰りのアルメニア人女性のアナ(シャルロット・ルボン)、そしてアナの恋人で米国人ジャーナリストのクリス(クリスチャン・ベイル)。3人の男女の複雑に絡み合うロマンスを史実の中に織り込み、壮大なスケールで描いた悲劇と希望の物語だ。 東京では珍しい大雪が降り積もった1月下旬に初来日をしたジョージ監督は、穏やかな笑みをたたえながら、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた。
「これは1915年の史実を世に知らしめる大きなチャンス。神様からの恵みだ」
Q.日本ではあまり知られていないアルメニア人の大量虐殺ですが、監督はそれをいつ知って、映画化にこぎつけたのでしょうか? テリー・ジョージ監督(以下、ジョージ監督):『ホテル・ルワンダ』(2004)のために、1994年にルワンダ虐殺のリサーチをしていたとき、アルメニアでも大虐殺があった事実を知りました。そして、「ジェノサイド」という言葉はこの大虐殺を形容するために作られた単語であり、トルコ政府がこの史実を戦略的に封印してきたということもわかりました。 そんなとき、たまたまアルメニア人のプロデューサーたちが、私にアルメニア正教の司祭が虐殺から逃れ、生き延びたという史実をもとにした映画を撮ってほしいと声を掛けてきてくれました。この映画の製作のためにアルメニアやトルコ、ドイツに渡り、調査をしていたのですが、残念ながら製作資金が十分に集まらず、この企画はとん挫してしまったのです。しかし、今度はプロデューサーのマイク・メダヴォイさん、エリック・イスライリアンさんが、「『THE PROMISE/君への誓い』を一緒につくってほしい」と、声を掛けてくださいました。当初は「アナトリア」という題名の企画で、僕に脚本のリライトと監督を依頼してくれたのです。製作資金も十分に集まっていて、「これは1915年の史実を世に知らしめる大きなチャンス。神様からの恵みだ」という気持ちで、この企画に乗りました。いわゆる政治ものにしては、かなり大きなスケールで、それなりの予算がついていたので、監督としてはまたとないチャンスだと思いました。 脚本をリライトする際、もともと描かれていたミカエルとアナのほか、クリスというキャラクターを僕が後からつくりました。