「ブナシメジ」安定生産で根強い需要 カット加工品が拡大
野菜の価格変動が大きくなる中で、ブナシメジは安定感で需要をつかんでいる。生産量は20年間で4割増えた。調理の幅が広い万能食材で、屋内栽培のため生産量も安定。簡便ニーズを捉えたカット加工商品の需要が拡大しメーカーが生産を強化する。産地は収量や食味を上げる育種に取り組む。 【グラフで見る】ブナシメジの生産量の推移 農水省によると、2023年のブナシメジの生産量は11万7924トン。近年の生産量は12万トン前後で横ばいだが、20年前の03年と比べ40%増えた。 東京の青果卸は、定番の鍋物料理から炒め物まで幅広く使えるため「キノコ類の需要が落ち着く夏場も、他品種と比べて安定した引き合いがある」と話す。野菜の価格変動が激しい近年、ブナシメジは天候に左右されない安定した入荷量と価格で「特売商材としての需要も根強い」(同卸)という。関東の大手スーパーによると、今年11月のブナシメジの100人当たりの販売点数は「年々増加傾向で5年前の19年比では2割増えた」という。 中でも、簡便性を高めたカット加工のブナシメジの売り場が広がる。同スーパーは「近年はブナシメジの売上高のうち5割以上をカット商品が占める」と話す。別の大手スーパーも、カット商品の割合が「5年ほど前の展開当初は10%未満だったが、現在は40%ほどに増えた」という。 ミスズライフ(長野県飯綱町)は、04年に業界で初めてカットブナシメジの生産販売を開始。13年には株付きのブナシメジの生産をやめ、カット商品に一本化した。23年9月に新工場を設立し、生産を拡大した。 同社のカットブナシメジの販売数量は「13年からの10年間で75%増加した」という。ごみが出ず、包丁を使う手間もかからない点が「現代人のニーズにはまっており、今後も市場は成長していく」とみる。 キノコの主産地・福岡県のJA福岡大城は、大木町と連携し、生産する「博多ぶなしめじ」の品種を定期的に更新。正品率や単位面積当たり収量を上げ、13~23年の10年間は生産者数が横ばいから微減傾向の中で、生産量を3割増やした。 現在出荷するのは6代目となる新品種「福おおき173号」。生産者が運営する「大木きのこ種菌研究所」と県の農林総合試験場が共同で育種し、23年9月に初出荷した。従来の品種に比べて高温に強く栽培期間も短いため、冷房などのコストを抑えられ、苦味が少なく食感が良い特長を持つ。JAは「県とも連携しながら、品種更新に向けて育種していく」と話す。 (永井陵)
日本農業新聞