大学生「前向き休学」増加中、新卒を担保したまま留学や起業し就活有利に…「メリットしかない」
文科省の23年度の調査では、大学や短大などを休学した学生は8万9201人で、うち5372人(6%)が「就職・起業」を理由に挙げた。就職・起業は19年度に初めて入った項目で、同年の3768人から大幅に増加した。
「海外留学」を理由にした休学は13・7%(前年度比1・8ポイント増)で、「精神疾患」(12・6%)、「経済的困窮」(11・9%)を上回り、09年度以降の同種の調査で初めてトップになった。
◆経済的負担の軽減も
学生の起業などを支援するNPO法人「ETIC.」(東京)は10年代以降、起業や就業体験などを目的とした休学を後押ししてきた。日本では新卒一括採用が主流のため、卒業してから様々な経験を積むという選択肢を取りにくい。同法人の伊藤淳司さんは「大学で授業さえ受ければいいと考える学生は減っている。SNSで情報が入りやすくなり、意欲が高い周りの学生に影響を受けるケースも多い」と話す。
休学による経済的な負担が軽減されたことも一因だ。国公立は以前から費用がかからないが、私立では休学中も授業料の支払いを求める大学もあった。それが今は、年数万~10万円程度の「在籍料」のみですむのが主流になってきている。
山本繁・大正大特命教授(起業家教育)は「各大学で起業家育成や留学支援のプログラムが浸透し、地域創生に携わる『地域おこし協力隊』なども含め、学生の選択肢が増えた。大学も、知識だけでない総合力を身につけるよう推奨している。自身の能力開発のため、休学して学外に活動の場を探す動きは今後も広がるのではないか」と話している。