村田諒太が“疑惑の判定負け”で世界ベルト逃し場内騒然!
プロボクシングのWBA世界ミドル級王座決定戦が20日、有明コロシアムで行われ、ロンドン五輪金メダリストで、同級2位の村田諒太(31、帝拳)が同級1位のアッサン・エンダム(33、フランス)から4回に右のカウンターでダウンを奪い、5回、7回にも、“ロープダウン”とも取れる大ダメージを与えながら「1-2」の疑惑の判定負けを喫した。不可解な判定負けに1万人を越えるファンで埋まった場内は騒然となった。 試合後、帝拳の本田明彦会長は、「長くボクシング界にいるが、こんなひどい判定は見たことがない。ワンサイドの試合。ボクシングの信用がなくなってしまう判定だ」と大激怒。世界戦で豊富なレフェリー、ジャッジ経験のある森田健氏が、「私は2ポイント村田が勝っていた」と語り、ミドル級の統一王者、ゲナジー・ゴロフキンとの世界戦経験のある元世界暫定王者の石田順裕氏も、「村田の圧勝だった。あんなパンチの手数だけで勝てるならもうプロボクシングじゃない。ジャッジに何か(疑惑)を感じる」と、ジャッジ批判するほどの“疑惑判定”で、プロ転向後、5年間待って巡ってきたチャンスを逃した。 それでも村田は「内容は、第三者が判断すること。僕自身が勝った、負けたを言いたくない」と潔ぎ良かった。試合には惜敗したが、そのパンチ力が世界最前線のミドル級で通用することは証明した。
村田は手を上げていた。 「判定を聞く瞬間に少し胸騒ぎがしたんです。五輪の時は勝った感じがしていたけど、今回は変な予感はした」。アナウンサーがジャッジを読み上げる前に結果を知った本田会長が本部席で大きく両手を広げて疑問を呈していた。ジャッジの一人目のパナマ人が「116-111」でエンダム。2人目のアメリカ人が「117-110」で村田。そして運命の3人目のカナダ人は「115-112」でエンダムを支持した。 4回にロープに詰め、エンダムが右を出すタイミングに右のストレートをカウンターで合わせてダウンを奪い、5回に、また右で吹っ飛ばして今度はセカンドロープにしりもちをつかせた。だが、この5回もパナマ人ジャッジはエンダムに10とつけていた。7回にも、右ストレートでぐらついたエンダムは、トップロープを両手でつかんでダウンを免れた。 「ダウンを取れた。そのあともガードの上からでもぐらぐらしていた。なかなかの手ごたえはあった」 グロッキー寸前にまで追い詰めたロンドン五輪の金メダリストが敗者で、足を使いクリンチに逃げ、スリップダウンでダメージを逃がしながら左目の下を腫らしてフラフラになったカメルーン人が勝者である。 場内からは、不満を示す声や罵声が次から次へと上がって騒然となった。 1回はたったの2発しか手を出さなかったが、これも綿密な作戦の一部だった。 「右のパンチに独特の角度があるので、それを見極めたかったので」。それでもブロックをしっかりと固めて一発もダメージブローは打たせない。じりじりとプレッシャーをかけ続けたのは村田だった。 序盤の3回は確かに手数でエンダムだろう。中盤は村田のワンサイドだった。だが、2人のジャッジは、8回以降のエンダムを支持していた。 9回は、左のジャブがエンダムのガードをかいくぐってヒット。膝がぐらついた。 10回も左から右のボディブローにエンダムの体がゆがんだ。いずれもクリンチで逃げた。11回はエンダムの手数を勝るほどのダメージブローはなかったが、最終回も、ほとんどエンダムはクリンチで逃げていた。 陣営は勝利を確信してリスクを回避するためゴーサインを出さなかった。 「あれだけへっぴり腰で逃げながら打っていて手数もくそもない。負けているような展開ならば、最終回に“確実に倒せ!と”行かせますよ。倒していますよ。でも絶対に負けはないから行く必要もないと考えた。いろんな見方があるにしてもひどすぎる。村田が可哀想」。本田会長の怒りももっともである。 エンダムでさえ、ジャッジを聞くまでの間は、「ポイントはとっていたと思ったが、アウエーでもあるし(勝った)確信はなかった」と、疑心暗疑だったという。 結果的に「1-2」と割れたジャッジ内容を問われると「2人共にパンチは当たっているが、よくよく見ると、村田は1ラウンドで3発程度の右だけ。自分のほうが手数は多い。ジャブを効かせたし、コンビネーションも出た。その印象の違いだったのだろう」と自己分析した。 「村田が前に出てくることは承知していたのでジャブを打って距離をとるという戦略を貫いた。ラッシュをすればKOもできただろうが、無理はしなかった。ダウンしたがリカバリーできた。村田はコンプリート(完璧な)ファイターじゃなかった」 倒されながらもベルトを手にしたエンダムは上機嫌だった。