開高健の素顔とは!?大阪で同級生らが思い出語る講演会
開高健の素顔とは!?大阪で同級生らが思い出語る講演会 THE PAGE大阪
大阪出身の芥川賞作家、開高健さんをしのぶ講演会がこのほど大阪市西区の市立中央図書館で開かれ、開高さんの海外取材に料理人として同行した専門学校教員などが講演し、文学ファンらが熱心に聞き入った。同図書館1階ギャラリーでは15日まで、行動する作家ゆかりの品々を展示する「オーパ! 世界の旅人 開高健」展が開催されている。
「社会性がない」と開高健が卑下した理由
この講演会は開高文学を通じて関西の文化振興をめざす「開高健関西悠々会」が主催。「オーパ! 世界の旅人 開高健」展関連の特別講演会として企画された。 はじめに同会会長で、開高さんと親交が深かった京都大学名誉教授の作花済夫さんが「開高健との思い出を語る」と題して講演。作花さんと開高さんは旧制府立天王寺中学校(現天王寺高校)の同級生。1年次、開高さんが級長、作花さんが副級長を務めて以来、生涯にわたって交流が続いた。 作花さんは開高さんがしばしば自身を「社会性がない」と卑下していた点を重視。「開高は人気作家になってからも、同窓会の会誌に欠かさず近況報告の一文を寄せてくれた。社会性は十分持ち合わせていた」と指摘。「作家は社会性がないととらえがちな一般人の考えに、合わせようとしたのではないか」と分析し、豪快に見える開高さんが繊細な気配り感覚を持ち主だったとの見解を示した。
巨大オヒョウの100人前活け造りに舌鼓
開高さんの芥川賞受賞を祝い、同窓会名で万年筆を贈った際、開高さんから丁重な礼状が届いた。作花さんは礼状の文面を参加者に提示。『東京の食いもののまずいことときたらお話になりません』『今度大阪へ行ったら仇討ちみたいに食いまくったるゾ』などの記述に関して、作花さんは「大阪は食べ物が美味いというのは、関西を拠点にしている同窓会メンバーに対する心配りでしょう」と、開高文体の実例を挙げながら、開高さんの繊細気配り感覚を実証した。 続いて、辻調理師専門学校特任教授の谷口博之さんが登場。谷口さんは1982年から87年にかけて、開高さんが世界各地へ釣りに出かけた雑誌企画「オーパ!」連続取材に料理人として同行。料理の腕前やたくましく大らかな人柄から、開高さんに「教授」の愛称でかわいがられた。 「野外料理は初めて体験することばかり。巨大なオヒョウで100人前の活け造りを作ったときには、中華料理で調味料を載せて回すテーブルをしょうゆ皿に代用し、チューブ入りのワサビをてんこ盛りにして、開高さんに召し上がっていただきました」(谷口さん) 何もかもがスケールの大きい昭和のパワーを感じさせる逸話だ。