「取り調べ拒否」Tシャツは危険物? 弁護士が大阪府警の対応に抗した深いワケ
大阪府警羽曳野署に勾留されていた男性が「私は取調べを拒否します」との文言が書かれたTシャツを着用していたところ、警察から取り上げられていた一件。弁護人が17日に会見して明らかとなったが、たかがTシャツで済ませられる話ではない。 【独自】著者グループは架空? ベストセラー「反ワク本」に捏造疑惑浮上…製薬会社が調査結果公表へ 男性が取り上げられたTシャツは、弁護士団体「RAIS」(取調べ拒否権を実現する会)が製作。一部の弁護士が今年に入ってから配布を開始していた。 会見を開いた松本亜土弁護士が経緯について説明する。 「取調室は密室の空間で弁護人が立ち会うことができないので、ややもすれば自白の強要の恐れもあります。そうした恐れを防ぐために、我々は勾留者にTシャツを差し入れしています。そのTシャツを私が担当している男性が留置場で着用していたところ、署員から脱ぐように指示され、取り上げられたんです」 松本弁護士が署に確認したところ「危険物だから」との説明があったという。 ■“量的冤罪”を生む可能性 「大阪府警には抗議し、Tシャツの返還と着用を認めるように求めています。ですが、今のところしかるべき回答は得られていません。本件のようなことがまかり通れば、今後もさまざまな法律が過大解釈される恐れもあります。真に罪を犯したのであれば、償わなければいけませんが、密室での取り調べでは事実が歪められ、量刑に関わる“量的冤罪”を生む可能性もあります」(松本弁護士) 松本弁護士は今回の件は「黙秘権」「表現の自由」の侵害に当たると主張しているが、これに対し大阪府警は、「Tシャツが他の留置人の目に触れることで心理的な影響を与え規律や秩序を害する恐れがあると判断しました。本人にも説明をした上で適切な処置をしました」と回答した。 松本弁護士が憤る。 「憲法上認められた黙秘権にも絡む表現物を規制するには現実的、具体的な“危険”が必要です。今後も着用を認めてもらうように抗議していきます」 先進諸国に比べ、日本ではいまだ取り調べの可視化は進んでいない。