世界の恐ろしい「魔女」5選、皮を脱いで寝息を吸う魔女からインドの残忍な吸血女まで
ドラキュラ伝説にも影響? 近年は力の象徴として見直される例も
古代の森をさまよう黒い影。夢に現れる恐ろしい亡霊。魔女は長い間、人間の空想をかきたててきた。今はカリスマ的な存在として描かれることが多いが、かつて魔女は文化を超えて人々に恐怖と不安を与えてきた。世界の5つの魔女の物語から、彼女たちを生んだ社会が抱えていた恐怖や信念をひも解いていこう。 ギャラリー:腐らない死体、伸びる爪…本当だった「吸血鬼の証拠」 写真と画像6点
山姥(やまうば、やまんば) 山奥に暮らす恐ろしい老婆
日本の山奥に暮らす山姥は弱々しい老女だ。しかし、それは最初のうちだけ。 突如、角を生やし、ヘビのような髪を振り乱す恐ろしい姿に変身すると、後頭部にあるもう1つの口で捕らえた獲物を貪り食う。山姥伝説の中には、鉄砲の弾をよけ、その場を闇で満たすことができる山姥が登場するものもある。しかし、本当に怖いのは伝説が生まれた背景だ。 山姥伝説は飢饉の際、年老いた女性を犠牲にしていた歴史に根差しているのではないかと、作家で東北地方の歴史を研究するナイリ・アニ・バッカリアン氏は言う。 「東北地方の田舎などで山姥の物語が生まれたのは、凶作が珍しくなく、口減らしのために高齢の女性を山に捨てざるを得なかったことへの負い目が人々にあったからかもしれません」
ブーハグ 皮膚を脱ぎ捨てるいたずらの天才
米国ノースカロライナ州とサウスカロライナ州ほかで暮らすアフリカ系米国人のコミュニティー「ガラ・ギーチー」などには、邪悪な力に乗っ取られた人々の話が伝わっている。 なかでも恐れられているのは、皮膚を脱ぎ捨てる魔女「ブーハグ」だ。皮を脱いだブーハグは、ドアのカギ穴など小さな隙間からするりと家の中に忍び込み、住民の寝息からエネルギーを吸い取ったり、人々にいろいろな悪さを強いたりする。 1950年代、ミシシッピ州の語り部ジェームス・ダグラス・サッグスは、著名な民俗学者リチャード・ドーソンにブーハグの話を語っている。話は現在、ワシントンD.C.にある米国議会図書館の米国民俗文化センターに収められている。 ブーハグは恐ろしい力を持った魔女だが、その物語は大抵ユーモラスなひねりが加えられている。サッグスの語りでは、ある男がブーハグを退治しようと、脱いだ皮に塩とトウガラシをふりかけた。戻ってきたブーハグが皮を着ると、あまりの痛みに「皮膚よ、私を忘れたの!?」と泣き叫んだという。