『インサイド・ヘッド2』ケルシー・マン監督×マーク・ニールセンプロデューサー 言葉ではなく“映画”で伝えること【Director’s Interview Vol.425】
言葉ではなく“映画”で伝える
Q:ピクサー映画では「成長」がテーマとして入っていることが多いです。そして今回はまさに「成長」そのものを描いています。「成長」を描くことは物語を語る上でどんな効果があると思いますか。 マン:今回は続編ですが、そこでは特に「成長」という要素が必要となってきます。続編モノをいろいろ調べて分かったのは、成功している続編はすべて成長や変化を描いているということ。前作の繰り返しになってしまった作品は上手くいっていませんね。今回はライリーがティーンエイジャーになりますが、そのこと自体が成長だし、たくさんの変化が自然と出てきますよね。 Q:監督のメッセージである「この映画は、自分自身を受け入れることをテーマにしています。ダメなところも含めて、自分を愛すること。誰しも愛されるために、完璧である必要はないのです。」という言葉が、鑑賞後に心に沁みます。子供から大人まで皆が抱えている心の問題をエンターテインメントとしてアニメ映画化する意義を、どのように捉えていますか。 ニールセン:私はピクサーに27年勤めていますが、ピクサーで好きなのは、人間として共感できるものを扱っているところ。年齢や性別に関係なく誰もが共感できるものを扱っているんです。この『インサイド・ヘッド』シリーズでは、扱っているものは人間の感情そのもの。人としてより深いレベルで共感できるものがある。感情とは、皆が持っていて皆が理解できて、皆が共有しているものですからね。 マン:私は楽しい映画を作りたいんです。映画を観た後に「もう一回観たい?」と聞かれて「別に…」となるのではなく(笑)、意味のあることを楽しく伝えて、「また観たい!」と思ってもらえることが、とても良いやり方。自分がティーンエイジャーだった頃、シンパイ、ハズカシ、イイナー、ダリィのような感情を抱えているのは自分だけだと思い、すごく孤独でした。でもこの映画を観てもらえれば、「皆こういうことを経験するんだ! 自分だけじゃないんだ!」と分かってもらえると思います。特にティーンエイジャーは自分で抱えているものについて、なかなか話さないですよね。しかもその辺のことは言葉で伝えるのが難しい。だからこの映画を作ったんです。 Q:ピクサーはどの作品でも常に期待を上回ってきます。本作も世界で大ヒットを記録していますが、その秘訣はどこにあるのでしょうか。 ニールセン:いろんな要素があるとは思うのですが、とにかく時間をかけてストーリーを作ること。大体どの作品もストーリー作りに4年はかけています。話を作っては壊し、また作っては壊しと繰り返していくことにより、話がどんどん強いものになっていく。4年経ってみると、非常にタイトで、且つ楽しめて、自分たちが誇りに思えるようなものが出来ている。時間を掛けて何度もやり直すことが重要ですね。 監督:ケルシー・マン ノーザン・ミシガン大学で学び、 コマーシャル・スタジオでアニメーションのキャリアを始める。 その後、カートゥーン・ネットワーク、ワーナー・ブラザース、ルーカスフィルム・アニメーションなどの会社でアニメーション、絵コンテ、演出などを手がけ、2009年にピクサー・アニメーション・スタジオに入社した。『モンスターズ・ユニバーシティ』ではストーリー・スーパーバイザーを務め、『トイ・ストーリー3』にも参加。『モンスターズ・ユニバーシティ』の短編『モンスターズ・パーティ』では監督を担当。『アーロと少年』と『2分の1の魔法』ストーリー・スーパーバイザーを務めた。 プロデューサー:マーク・ニールセン チコ州立大学でジャーナリズムを学んだ後、映画制作アシスタントとしてキャリアを積む。1996年にピクサ一・アニメーション・スタジオに入社。モデリング、ライティングなどのスタッフとして『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『カーズ』に参加。短編映画『メーターと恐怖の火の玉』でプロデューサーを務めるようになり、『カーズ2』『インサイド・ヘッド』でアソシエイト・プロデューサーを、『トイ・ストーリー4』ではプロデューサーを担当。ディズニー・プラスの短編シリーズ「フォーキーのコレって何?」のプロデュースも手がけている。 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『インサイド・ヘッド2』 8月1日(木)公開 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
香田史生