『Kanon』『リトバス』……Key楽曲サブスク解禁で蘇る25年間 “泣きゲー”のパイオニアが放つ楽曲の魅力
2024年9月16日、ビジュアルアーツのゲームブランド・Keyの歴代楽曲の一部が各音楽ストリーミングサービスで解禁された。 【写真】麻枝准楽曲への愛を語るアニソンシンガー・YURiKA Keyとは、『AIR』『CLANNAD』『Summer Pockets』といった、美少女たちが登場するビジュアルノベルゲームに感動する要素を加えた、いわゆる“泣きゲー”と呼ばれるジャンルを確立した草分け的なゲームブランドだ。1999年に1作目の『Kanon』を発表して以降、25年以上にわたって、過酷な運命に立ち向かう魅力的なキャラクターと心を揺さぶる繊細な描写が多くの人の心を掴んで離さず、その人気は恋愛アドベンチャーゲームという一つのジャンルを飛び越えて、ゲーム業界はもちろん、アニメや小説など、後世から現在に至るまでのさまざまな作品に大きな影響を与えている。 1つのゲームブランドの歴代楽曲のサブスク解禁のニュースがなぜこれほどまで大きな話題となっているのか、Keyを知らない人にとってはあまりピンとこないかもしれない。その疑問に答えるとするならば、Key作品にとって“音楽”は切っても切り離せない存在だからだ。 Keyの“泣き”要素の一つとして、音楽を巧みに使った演出、そしてシナリオと音楽が強くリンクすることによる感情増幅の効果がある。それはゲームはもちろん、2010年以降に制作されたKey原作によるオリジナルアニメ『Angel Beats!』(BS日テレほか)、『Charlotte』(TOKYO MXほか)、『プリマドール』(TOKYO MXほか)などでも、意識的に行われている。そんな物語との親和性の高い楽曲の数々が視聴者の心に強く印象付けられるのだから、ゲーム音楽も含めた広義の意味での“アニソンシーン”においてKeyの名前がたびたび度々挙がるのも当然であろう。 その代表曲はゲーム『AIR』の主題歌である「鳥の詩」。2000年に発表されたこの楽曲は、夏らしい爽やかで澄み切ったサウンドと、歌唱を務めるLiaのクリスタルボイス、そして作品人気や動画サイトでの後年の再評価も加わってアニソンシーンに強いインパクトを残した。また、2010年に放送されたTVアニメ『Angel Beats!』に登場するガールズバンド・Girls Dead Monsterによる80’s、90’sのロックを掛け合わせたストレートなバンドサウンドも、Keyの音楽を世に広めた大きな出来事であった。その2代目ボーカルとして、当時は無名だったLiSAを抜擢したことも、今振り返るとアニソンシーン、そして日本の音楽シーンにおいて歴史の転換点の一つであったようにも思う。 そんなKey作品の約25年間の音楽を語る上で、麻枝准という天才の存在は欠かせない。メインのシナリオライターとして『AIR』『CLANNAD』『Angel Beats!』『ヘブンバーンズレッド』などを手掛けた麻枝は、ミュージシャンとしても作品のために数多くの楽曲を書き下ろしている。独特なコード進行や変拍子、転調を多用した麻枝節と呼ばれるアーティスティックな楽曲の最大の特徴は、心地よさすら感じさせる美しいメロディだろう。そこに物語性の強い歌詞が加わることで作品への親和性が爆発的に高まり、多くの人の心に深い印象を与えるのだ。 今回解禁された第一弾作品は、Keyの第1作目にしてヒットを記録した“泣きゲーの金字塔”とも言われる『Kanon』、青春と友情をテーマにした挑戦作『リトルバスターズ!』、2025年にTVアニメも放送されるKeyの原点回帰作品でもある『Summer Pockets』、男女の恋が麻枝准によって綴られたコンセプトアルバム『Love Song』シリーズだ。 この中から、筆者のオススメする楽曲やアルバムをいくつかピックアップ。Key楽曲をディグる一助になれば幸いだ。 ■『Kanon』 ・「風の辿り着く場所」 作品のEDテーマである本楽曲は、4つ打ちのリズムを基調とした、雪解けの春を感じさせる温かく軽やかな1曲。折戸伸治が作曲したボーカル楽曲で、サウンドクリエイター集団「I’ve」の高瀬一矢が編曲として参加している。一部のファンの間で“謎ラップ”と呼ばれ愛されているラスサビ前のラップパートも聴きどころ。 ・『Kanon ORIGINAL SOUNDTRACK』 “泣きゲー“の看板を掲げるKeyにおいて、ボーカル曲だけではなくもちろんBGMも大きな役割を果たしている。折戸や麻枝らが手掛けたBGMはメロディが強調された楽曲が多いため、耳に残りやすいはずだ。メインヒロイン・月宮あゆのテーマ曲「日溜まりの街」も個人的には推しておきたい。