100倍は100倍ではない(8月4日)
猛暑が続いている。夏痩せの期待も膨らむ一方で、夏こそ目標を決めてダイエットに励んでおられる方も多いだろう。目標は体重が一般的だが、最近の健康診断や人間ドックでは健康科学の進歩に基づいた指標も提案されている。代表的なものとしてよく耳にするのがBMIと呼ばれる指数である。体重(kg)を身長(m)で2回割った値で、18・5~25・0の範囲が正常値と言われる。こちらは体重ほど数字をにらんで一喜一憂することにはなっていないようである。 体重が増えると何となく体が「重い」と感じられるが、中世の欧州では物体が落下するときの速さは物体の重さに比例すると信じられていた。ガリレオ・ガリレイは有名なピサの斜塔での実験で重さの異なる物体を同時に落下させ、見物客に物体は同時に地面に着くことを見せたと言われている。400年前の彼の著書、新科学対話、天文対話には物体の運動や天文学などの様々な科学的な話題が議論されている。近代科学の父と呼ばれるゆえんである。
その中には動物や建築物が大きくなった時のサイズの限界の話も出てくる。ある動物の寸法を単純に2倍に大きくした動物を品種改良で作ったとする。体積は2×2×2で8倍になり、体の成分が同じなら体重も8倍になる。一方足の太さ(断面積)は2×2で4倍にしかならないので、同じ脚で支えなければならない体重は元の2倍になる。人間の作る建物などでも同じで、2倍のサイズの同じ材質の柱などを使えば2倍の大きさのしっかりした建築物が作れるわけではない。 巨大な氷山。全体の9割は海面下だ。冷蔵庫の氷を水にいれるとほどなく溶けてしまうが、氷山では3年以上残るものもあるという。氷の塊としての体積に対して表面積が小さいため、外部からの熱が内部まで伝わるのに時間がかかるのが主な原因である。サイズが100倍のグラスに100倍の氷を入れてオンザロックを作ろうとしても氷の冷気が伝わるのに時間がかかるため、たとえ巨大なマドラーで一生懸命かき混ぜたとしてもウイスキー全体を均一に冷やすのは容易でない。