鈴豊精鋼、特殊鋼棒線表面処理工程の環境対策強化。年内に硫酸回収再利用施設新設
中部地区の大手磨棒鋼・CH鋼線メーカー、鈴豊精鋼(本社・名古屋市緑区、社長・鈴木貴博氏)は、特殊鋼棒線生産の表面処理工程における環境対策を強化する。加工に使用する硫酸を回収、再利用する施設を新設し、今年度(24年12月期)内の運用開始を目指す。薬液を再利用することで廃棄物を低減、さらなる環境負荷低減を図りながら製品の安定供給を続けていく構え。 特殊鋼棒線の母材はまず、硫酸や塩酸でスケールを除去し皮膜を施す。二次加工での欠かせない工程だが、稼働を続けると薬液の鉄イオン濃度が高まり使用できなくなる。 これまでこの廃液に苛性ソーダを投入して水とスラッジに分離し、水は中性(pH7)に調整して排出、スラッジは産業廃棄物として処理していた。 かねて環境対策の取り組みを幅広く展開してきたが、従来以上に廃棄物の数量を減らし環境に優しい企業の体現を狙い、数年前から設備導入を検討。 生産設備をはじめ他の投資案件が一段落したことに加えて、足元で苛性ソーダ価格が急激に値上がりしていることも考慮し、機械の購入を決めた。先月から工事に取り掛かり、12月までに完成させ実運用する計画。 鉄イオンが溜まった硫酸を少量ずつ設備に投入し冷却することで鉄イオンと硫酸の化合物・硫化鉄の結晶が沈殿する。この結晶は七水和物のため水分を吸収し液体の容積が減少するものの3分の2程度がリユースできる。また結晶そのものも有価で売却が可能だ。 主力向け先の自動車業界をはじめ、各産業で環境対応に向けた取り組みを加速する動きが広がる。同社は将来的なグリーン鋼材の導入も視野に入れるなど、実行できることを模索しながら製造者としての責務を果たしていきたい考え。