具体化とは?言葉の解像度を高め仕事に役立つ「具体化力」の鍛え方
事実はまず「5W3H」で具体化する
情報を具体的にするためには、「5W3H」を活用するのが有効です。 「5W3H」というのは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「How many(どのくらい)」「How much(いくら)」で情報をわかりやすく伝える基本です。 相手に何か伝えたり報告したりしたときに、「それってどういうこと?」「ちょっとわからないところがあったんだけど」などと聞き返される場合は、大抵この5W3Hのいずれかが抜けています。言葉で伝える場合ならば、相手がこのように聞き返してくれる可能性が高いので、その場で不足を補うことができますが、文章の場合はそうはいきません。わざわざ問い合わせしてくれるのは稀で、誤解されたままだったり、記憶の片隅に追いやられたりしてしまうでしょう。 5W3Hを使って具体化すれば、伝えたいことが整理され、情報の解像度も高まります。特に、業務日誌や日報、進捗報告、業務以来などの「事実情報」を具体化するときに役立ちます。 すべての項目に当てはめることはできないかもしれませんが、まずは当てはめてみようとする姿勢がトレーニングになります。 ●「5W3H」 When=いつ・いつまでに(期限・期間・時期・日程・時間) Where=どこで・どこへ・どこから(場所) Who=誰が・誰に(主体者・対象者・担当・役割) What=何を・何が(目的・目標・要件) Why=なぜ・どうして(目的・理由・根拠・原因) How=どのように(方法・手段・手順・様態・様子) How many=どのくらい(程度・数量) How much=いくら(価格・費用)
物事を具体化する「5つの思考のものさし」を鍛えよう
ただ、頭の中にある物事を具体化しようとしても、「どうしても何も思い浮かばない…」という場合もあるかもしれません。 そんなときに力を発揮するのが、「思考のものさし」です。いわば解を導く補助線のようなもので、思考がぱっとクリアになり解像度が高まります。 「ものさし」の種類はたくさんありますが、特にビジネスで使い勝手がよく、万能なのは次の5つです。 ●ビジネスシーンで役立つ「思考のものさし」 1.「メリット・デメリットは?」 2.「ビフォー・アフターは?」 3.「類似点・相違点は?」 4.「誰におすすめ?」 5.「どうやって?どんなふうにして?」 何も思いつかないときは、まずこの5つのものさしに当てはめてみると物事が自然と具体化していきます。それぞれの使い方を、ご紹介しましょう。 ◆ものさし1:メリット・デメリットを考える これはメリットか、それともデメリットか、で物事を考えていく方法です。 たとえば、「上司から社員食堂を廃止することについて意見を聞きたい」と言われた場合。自分の考えがまとまらず、具体的な意見が思いつかない…と悩む人は多いでしょう。 そんなとき、メリット・デメリットで考えてみると、たとえばメリットは「社員食堂の運営費が削減できる」、デメリットは「若い単身者が多いわが社では、食堂を利用することで栄養バランスを保っている社員も多いから、食堂がなくなることで彼らが体調を崩し業績に支障が生まれる恐れがある」などと、自分の意見を洗い出しやすくなります。 メリット・デメリットというものさしは、自分視点、会社視点、SDGs的視点など、いろいろな視点から考えられるのも利点です。そしてメリットだけではなくデメリットも踏まえたうえで出された結論は、説得力が格段に上がりますし、周りから「多角的に考えられる人」として評価されるでしょう。 ◆ものさし2:ビフォー・アフターを考える 前述の「メリット・デメリット」が物事の表と裏を比較しているのに対し、「ビフォー・アフター」は時間軸で比較します。 たとえばあなたがスポーツジムのトレーナーで、相手に入会を勧めたい場合、「会員の方の86%が3カ月以内に体重を5キロ減らすことに成功した」など、ビフォー・アフターで考えると伝えたいことを具体化できます。 ほかにも、例えば面白い本を読んでその感想を伝えたいとき、「いつも残業に追われていたけれど(←ビフォー)、この本のタスク管理術を実践したところ、仕事の効率が良くなって残業時間が大幅に減った(←アフター)」という具合に具体化することができます。 このように、ビフォー・アフターは「過去と現在」や「今と未来」を比較することで、その変化を相手がイメージしやすい形でイキイキと伝えることができるので、覚えておくと便利です。 ◆ものさし3:類似点・相違点を考える 比較する対象を見つけて類似点・相違点を考えるというのも、使いやすいものさしです。「たとえば、○○と似ているところは?違うところは?」などと自問自答してみましょう。 たとえば、目薬の販促用のポスターをA案、B案のどちらにするか決めるとき。「A案とB案の類似点は、タレントさんが目薬を手にしているところ。相違点は、A案は目薬を差した直後の『くぅ~!』な状態であるのに対し、B案は商品を手に取って『どや!』と掲げている状態である」などと、類似点・相違点を洗い出すことで、「A案のほうが、この商品ならではのクールな差し心地が伝わってくるな。B案はタレントさんの顔に目が行ってしまい商品の印象が薄くなるかも」など、自分では気づいていなかった理由も具体的に浮き彫りにできるでしょう。 このように、類似点・相違点を使って比較しながら考えをまとめると、第三者に伝わりやすい意見にブラッシュアップすることができます。 ◆ものさし4:誰におすすめ?を考える 「誰におすすめ?」は、この○○を喜ぶのは誰か、すなわち「ターゲットは誰か」を考えるというものさしです。 たとえばあなたが飲料メーカーの営業担当者で、得意先のスーパーマーケットに健康飲料の新商品を陳列してもらえるようお願いする際、このものさしを活用して「高血圧が気になる働き盛りのビジネスパーソンや、健康長寿を目指すシニア、子どもの飲食に気を配っている親御さん」などとターゲットを挙げていくと、具体化が進み、スーパーの担当者が納得・共感しやすくなります。 この考え方は、商品やサービスなどの企画を考えるときにも役立ちます。ターゲットを明確にすることで、その人たちが受け入れやすい価格やパッケージ、販促方法などディテールを詰めやすくなるため、提案する相手の同意も得やすくなるでしょう。 ◆ものさし5:どうやって?を考える 「どうやって?」は行動が生じる場面の具体化にうってつけです。 たとえば、運営している通販サイトにもっと人を呼び込み買ってもらいたいとき。人を集める販促手法やPR方法を考えようとしても、なかなか具体的に思い浮かばないケースがあります。 そんなとき、「たとえばどうやって?」という視点で考えれば、「5W3Hを意識して商品の説明をより詳細に書き、魅力を伝えやすくする」「キャンペーンや割引を実施して、お試し買いをしてもらう」「掲載写真を増やして商品のディテールを伝える」「商品を使用する様子を収めた動画を埋め込む」などと、具体的な手段や方法が洗い出され、行動に移しやすくなります。 もし「どうやって?」で具体化しても「まだ漠然としている」と感じたときは、さらに「どうやって?」を繰り返し自問自答しながら具体化を進めていくといいでしょう。