新NISA開始以降インデックス投資信託の人気が急拡大! 株式型への集中投資をどう変えるかが資産運用の課題に【投資信託の最前線】
●売れ筋投資信託の顔ぶれは大きく変わらないが 上位2本のインデックス投資信託の流入が圧倒的な大きさに 前回は、2024年上期(1-6月)の資金流入額が+8.4兆円と歴史的な水準となり、その中でも外国株式型への資金流入が+6.8兆円とその大部分を占めていたことを取り上げました。今回はさらに深掘りして、新NISAがもたらした運用スタイルの変化について取り上げます。 個別の投資信託の資金流入額ランキングを見ると、新NISAのスタート前と後で売れ筋商品の顔ぶれが大きく変わっている訳ではありません。しかし、上位の投資信託の多くを外国株式型が占めており、中でも、オルカンを含む上位2本の低コストのインデックス投資信託への資金流入額が計+2.4兆円程度と圧倒的な大きさとなっています。 インデックス投資信託は、運用担当者が銘柄の成長性などに着目して厳選して投資するアクティブ運用と違って、特定の株価指数などに連動する投資成果を目指すパッシブ運用を行っています。こうしたパッシブ運用を行うインデックス投資信託は、つみたてNISAがスタートした2018年頃から注目が高まっていました。それが新NISAで、資金流入額がさらに大きく加速しているのです。 ●インデックスの資金流入は2023年からアクティブを上回り 2024年上期は投資信託人気のけん引役に! 投資信託の評価を手掛けるモーニングスターのデータを用いたグラフで、詳しく見てみましょう。パッシブ運用を行うインデックス投資信託の資金流出入は、2019年以降、一貫して資金流入になっていることが確認できます。 パッシブ運用以外を「アクティブ」としてアクティブ投資信託も見てみましょう。2019年には資金流出となる場面もありましたが、2020年下期~2022年まではアクティブ投資信託の資金流入額が、インデックス投資信託を上回っていました。しかし、2023年は上期・下期ともに拮抗しながらもインデックス投資信託への資金流入額が逆転、若干上回ります。そして新NISAがスタートした2024年上期に、インデックス投資信託が+5.4兆円、アクティブ運用が+3.1兆円と大きくその差が開きました。インデックス投資信託が資金流入を大きくけん引する形になっていったのです。 ●インデックスは低コストでわかりやすい安心感が魅力 株式型への人気集中が今後どう変わっていくか 2024年上期にインデックス投資信託に歴史的な水準の資金流入額が見られた背景には、制度面の拡大も大きな要因になったと言えるでしょう。まず1つめに、新NISAのつみたて投資枠(年120万円)が、従来のつみたてNISAの投資枠(年40万円)の3倍になったことがあげられます。 また、インデックス投資信託は、たとえば、日経平均連動型であれば、日経平均とほぼ同様の値動きとなるというように、分かりやすい点が投資初心者に向いているとされます。旧NISAの「つみたてNISA」や、新NISAの「つみたて投資枠」では、コストに関する条件も設けられているため、分かりやすいだけでなく、低コストという安心感が投資初心者だけでなく、多くの投資家の人気を集めている理由だと考えられます。 ただし、現在は株式型のインデックス投資信託に人気が集中しています。今後、投資を始めた若年層の投資資金が積み上がり、シニア層になっていく中で、株式型のインデックス投資信託100%でよいという状況でなくなった際に、どこかのタイミングでリスクを落とすといった調整が必要になるでしょう。 個別に色々なニーズや生活スタイルがある中で、資産の構成比率の理想の姿は多様になるため、それが今後の資産運用における課題になると思っています。 藤原延介(ふじわら・のぶゆき) 1998年三菱信託銀⾏(現三菱UFJ信託銀行)⼊社後、2001年ロイター・ジャパン(リッパー・ジャパン)、2007年ドイチェ・アセット・マネジメント、2019年アムンディ・ジャパンを経て、2021年にBNPパリバ・アセットマネジメントに入社。投信営業本部マーケティンググループ 部長。ドイチェAMでは資産運用研究所長を務めるなど、約25年に渡り資産運用や投資信託に関するリサーチや投資啓蒙に従事。慶応⼤学経済学部卒。
藤原延介
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