福岡の「おひとり様の終活」に視察が相次ぐ背景。福岡市社協が自分らしい最期のためのサポート
さらに2019年にセンターを立ち上げたのには、大きく2つの理由があるという。 1つは、幅広いニーズに応えるため。「死後事務の事業をする中で、身元保証や入退院を手伝ってほしいなど、身寄りがないことによるほかの悩みも多く聞き、何かしら助言や支援ができればと考えました。それに、この事業は対象者が決まっているけれど、対象にならない方たちの相談にも応じたい。市民が安心して相談できる総合窓口になりたいと思ったのです」(吉田さん)。
そしてもう1つ、死後事務を行う事業者の広がりも背景にあった。「どんどん参入する団体が増えて、どこが信頼できるかわからなくて困っているという声を多く聞くようになりました。死後事務は一生に一度の大切な契約ですが、契約者をたくさん抱えたまま倒産した団体もあって……。私たちも実態を把握するのは難しいですが、団体を選ぶ際に確認したほうが良いポイント等を助言できればと考えています」(吉田さん)。 ■センターへの相談件数は年々増加
終活サポートセンターには、活動の柱が3つある。 すでにあった「死後事務委任」に加え、「啓発活動」として公民館などで出前講座や相談会を開催。2023年度は58件の依頼があり、延べ1239人が参加した。さらに「個別相談」では社協の窓口で終活全般に対応するほか、弁護士などによる専門相談も受け付けている。 センター主任の川﨑真帆さんは「地域での出前講座で特に関心の高いテーマは、エンディングノートの書き方、相続のことなどです」と話す。
センターへの相談件数は年々増え、2023年度は延べ1109件にのぼった。70・80代が75%で、女性が60%。相談内容は「死後事務」が圧倒的に多く、次いで終活の進め方などの「意思決定」、遺言の書き方を含めた「相続」と続く。 配偶者が先立ってひとりになった人や、身体が動かなくなってきて準備しなければという人はもちろん、意外にも子どもがいる人からの相談も結構あるという。 「お子さんが関東など遠くで働いていると、自分の死後に仕事を休んで手続きしてもらうのは申し訳ない、迷惑をかけたくないと死後事務の相談に来られます。でも、預託金を預かる事業は、要件に『原則として子がいない方』とあり、子に障がいや引きこもりなど特別な事情がない限り、契約できません。よくよく話を聞くとまだ親子で話されていないことが多く、まずはお子さんと話してくださいとすすめると、お子さんから『親の葬儀は自分がしたい』と言われて解決されるケースが大半です」と吉田さんは明かす。