散歩して気付いた「銭湯が必要や」 65歳社長、古民家リノベし開設
高野山(和歌山県高野町)への参詣拠点として栄えた橋本市高野口地域の地域コミュニティーの再生につなげようと、JR高野口駅(橋本市高野口町名倉)近くの古民家をリノベーションした一般公衆浴場(銭湯)、「高野口乃湯」が26日オープンする。県によると、市内で唯一営業する銭湯になるという。運営する「合同会社湯原」代表の湯原直子さん(65)は「子どもからお年寄りまで地域の人たちが寄り合える場所となれば」と期待している。 【写真まとめ】「高野口乃湯」 気になる浴室は?サウナも設置 湯原さんは、市内の合成樹脂シート・マット製造販売会社社長で、会社の工場新設に伴って1989年に東大阪市から橋本市に移住した。当時は、子育てと仕事で精いっぱいで、地域に目を向ける余裕もなく、その魅力にも気づかなかったという。 転機となったのは、2020年から感染が拡大した新型コロナウイルス感染症だった。営業活動ができなくなり、空いた時間で橋本駅や高野口駅の周辺を犬の散歩を兼ねてほぼ毎日歩くと、家の前にぽつんと座っているお年寄りたちに気づいた。「家に風呂はあるが、毎日洗って沸かすのはおっくう」や「外の施設のトイレ(温水洗浄便座)でお尻を洗っている」といった声を聞き、「お風呂屋さんが必要やな。人々の垣根も低くなる」と銭湯の開設を思いついた。 「歩くと、まちの歴史文化が好きになった」と話し、古民家も散歩しながら見つけた。旧高野口町の前身・旧名倉村の小出稀兵衛村長の自宅だった建物で、「質素で風流に暮らしていたことが感じられる」と気に入ったという。名倉駅(現・JR高野口駅)が1901年に開業し、高野山へ向かう人の利用や、商工業で栄えた高野口地域にあり、湯原さんは「ここが足がかりになって、まちが活性化したらありがたいこと」と語る。 銭湯開設に向け、2024年4月に着工。明治時代建造とみられる木造平屋建ての母屋の一部(約80平方メートル)の梁(はり)や床柱などを生かし、休憩スペースや脱衣所などを設けた。一部を撤去した母屋西側には、男女別の浴室やサウナなどを設置した約120平方メートルの木造平屋を新設。浴室の壁面には、湯原さんが趣味で収集した人物画などの陶板を飾り付けている。 銭湯の切り盛りは、同社の募集に応じた高瀬勇人さん(28)が担当。廃業した銭湯が復活して注目されている「御所宝湯」(奈良県御所市)で4カ月間の研修を受けた。他にスタッフ約10人が携わる予定だ。 営業は午前10時~午後10時(最終受け付け午後9時半)。第2・第4火曜日休み。入浴料は大人(12歳以上)490円、中人(6~11歳)170円、小人(6歳未満)100円。サウナも利用する場合は別料金。問い合わせは高瀬さん(080・5895・2656)で、開業後は高野口乃湯(0736・20・1728)。【藤原弘】