採用カメラが続かず消えたデジカメ向け光磁気ディスク「iD PHOTO」(730MB、2001年頃~):ロストメモリーズ File032
ディスク面を観察すると、記録密度を一定にするため1周当たりのセクター数が内側に行くほど減少し、境界がズレていっている様子が分かります。 さらに拡大して見ると、このセクターよりも細かい境界が観察できます。前述の説明で、ディスク面にデータの読み書きタイミングに使うクロック信号が刻まれていると触れましたが、これがそのマーク(FCM、ファインクロックマーク)でしょうか。 ドライブ内部のクロックを使うと完全な同期が難しく、読み書きのタイミングがズレてしまうことがありますが、ディスクに刻まれた情報から外部的にクロックを生成すれば、より正確なタイミングで読み書きできるようになります。データ密度が高いということは、それだけタイミングがシビアになるということですから、こういった技術を使うことで信頼性を高めているわけです。 とはいえ、この見えている境界がFCMかどうかは自信ありませんが。 カートリッジがネジ止めだったので、せっかくなので分解してみましょう。ただし、角あたりを中心に外周が接着されていたため、ネジを外すだけでは分解できず、少々てこずりました。 中はシャッターのロック、書き込み禁止スイッチ、そしてディスクがあるだけとシンプル。無理なく組み立てられるような構造になっており、よくできているなと感心するばかりです。
デジカメ用に開発されながら、デジカメで扱いにくい
高度な光磁気ディスクの技術を使い、小型ながらも大容量を実現したiD PHOTOは、価格、信頼性、サイズといった多くの面で、優れた特徴を持っていました。 ただし、これはあくまでカートリッジだけの話。メディアとして利用するにはドライブも必要となるため、どうしてもデジカメが高価になってしまいます。また、サイズも大きくなってしまうため、小型デジカメに搭載するのは難しいという問題があります。 実際、搭載モデルとして2001年2月に発売された「iDshot IDC-1000Z」は、標準価格16万円という高価なモデルでした。 これ以外にも欠点があり、ディスクの回転開始から記録可能になるまで時間がかかる、消費電力が大きいといったあたりは、とくに悩ましい部分でしょう。 2001年のコンパクトフラッシュの容量は、大きくても512MB程度。価格は4~8万円くらいしていましたから、730MBで3500円というiD PHOTOの安さは圧倒的です。しかし、搭載機が出なければ使いようがありません。結局、デジカメやドライブの製造・開発が可能なオリンパスと三洋電機、そしてカートリッジの製造ができる日立マクセルといった役者が揃っていながら、IDC-1000Z以外の搭載デジカメは登場せず、わずか1世代で消えていきました。
宮里圭介@TechnoEdge
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