「終活は老いの入り口や死への準備ではない」 FPが教える「五つの欲求を叶える」終活
そのためにはお金、健康、時間を最適化する必要もある。残りの人生で使えるお金を考えることも必要だ。お金は使うことに意味がある、と黒田さんは力強く話す。 「絆を感じたい」は、無理に新たな関係をつくるのではなく、これまでの人間関係を温め直すためでもある。いざという時に頼れる人との関係を見直したり、維持したりする意味がある。さらに「人から認められたい」にも通じることで、自分自身の存在意義を確認することだ。 「人は一人では生きられないので、絆を感じたいのは自然なことです。私はジムにほぼ同じ時間に行くので、そこで会う人に挨拶します。そういう薄いつながりでも生きていることを実感しますし、つながりがあると楽しいですね」 「人から認められたい」は人からの評価に関係することだ。黒田さんによると、人は年齢を重ねるほど「きちんとした人」と思われたい気持ちが増し、まわりに迷惑をかけないで最期を迎えたいという意識が強くなるそうだ。ポイントは「エンディングノート」である。 「エンディングノートは思いを書く箇所と事実を記録する部分が混在しています。まず初めに銀行の口座や不動産などの事実を書くことをおすすめします」 延命や臓器移植に関することは本人でないと決められないので、書いておく必要があり、自身の介護は誰が担うかもあらかじめ家族で話し合っておくことが重要だ。 そして終活の中でも一番気になるのが「心配事をなくしたい」だろう。心配事の上位にお金や健康・病気がある。お金については資産を、死後の手続き費用などの「残すお金」、病気やけがなどで入院する時などの「備えるお金」、日常の「使うお金」の三つに分けて考える「老後資金三分法」で捉えると、いくら使えるかが分かり、心配が少なくなる。健康については黒田さんは筋トレを勧める。 「人生を楽しむためには、気持ちも大事だけど歩けるだけの体力が必要ですからね」 このように五つの欲求を叶えることが、そのまま終活につながると黒田さんは提唱する。 「終活は老いの入り口や死への準備ではありません。自分がやりたいことをやっていく人生のターニングポイントです。無理せず、楽しくやってください」 黒田さんはそう話して楽しそうに笑った。(ライター・鮎川哲也) ※AERA 2024年12月23日号より抜粋
鮎川哲也