財源定まらない防衛費 円安、物価高も直撃 装備品の単価上昇で整備計画に影響も
政府は、令和4年策定の防衛力整備計画で、9年度までの5年間の防衛費を総額約43兆円と定め、歳出改革や決算剰余金の活用、増税などで財源を確保するとした。しかし、過度な円安や物価高騰によって装備品の単価が上昇。さらに財源が定まらない状態が続けば整備計画の達成に影響が出る恐れがある。 【表でみる】自衛隊の歴史と防衛力整備の推移 整備計画では、輸入で装備品を調達する際に前提とする為替レートを、5年度が当時の水準に合わせ1ドル=137円とした一方、6~9年度は直近5年間の平均値である同108円に設定した。現在の円相場は1ドル=150円前後で推移しており、現状と乖離している。 このため米国の「対外有償軍事援助(FMS)」で取得するF35戦闘機など輸入装備品の単価は想定よりも上がっている。為替変動の影響を受ける経費は防衛費全体の1~2割程度とされるが、計画数量を調達できない懸念がある。 防衛省が今年2月に設置した、防衛力の抜本的強化に向けた施策を検討する有識者会議では、増額を視野に43兆円の見直しを求める意見が上がる。ただ、43兆円の財源が定まらない現状では「政府内でなかなか声を上げにくい」(防衛省幹部)のが実情だ。 石破茂首相は3日の参院代表質問の答弁で「一層の合理化を徹底し、整備計画に基づいて防衛力の抜本的強化を達成する」と述べ、43兆円を堅持する方針を重ねて強調したが、合理化にも限界がある。(小沢慶太)