「マンガは、もはやサブカルではない」 マンガから本と出合う大学図書館の仕掛けとは
「マンガじゃなくて、ちゃんとした本を読んで勉強しなさい!」という親の小言は、もう時代遅れかもしれません。いまやマンガは立派な学びの教材になり、大学図書館でも取り扱いが見直されています。そもそも、大学図書館の様相が保護者の学生時代とは大きく様変わりしています。蔵書のラインアップはもちろん、図書館という場のあり方自体が変化しています。(写真=近畿大学提供) 【写真】DONDENの書棚の一部。知的好奇心が刺激される並びになっている
図書館がより学生にとって意義ある場所になるように、大学もさまざまな工夫を凝らしています。 藤女子大学(札幌市)の図書館では、学生スタッフLiSt(リスト)が定期的にテーマ展示を企画しています。「パケ読み『ミッケ!』」と題して、思わず「パケ読み」したくなる(パッケージを見て読みたくなる)きれいな表紙の本を集めて展示したり、中身が見えないようにラッピングした本に「創作四字熟語」のポップをつけて、その言葉のみで本を選んでもらったりするなど、さまざまな本との出合い方を提案しています。 明治大学和泉キャンパス(東京都杉並区)の図書館は、ウェブ上に本棚を作るサービス「ナラベル」を利用してテーマ展示を行っています。例えば、夏にちなんだ「怪異」本や、レポートの締め切り時期に合わせた「レポートの書き方」本など、時期的なテーマも意識しながら、常時300以上のテーマの本棚をウェブ上に展示しています。 デジタルハリウッド大学(東京都千代田区)のメディアライブラリーは、教員や学生の企画によるイベントを数多く開催。本の著者やメディアの作り手たちなどを招いたセミナーやワークショップでは、著者らとの直接交流を通して、学生に興味関心の深掘り、各業界へ入るきっかけなどを提供しています。 大学図書館の進化系ともいえるのが、近畿大学東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)の図書館「ビブリオシアター」です。2階の「DONDEN(ドンデン)」には、2万冊以上のマンガと、それに関連する新書や文庫を合わせて約4万冊をそろえ、マンガを「知的好奇心を刺激するきっかけ」と位置付けています。そしてマンガによって想像力を触発し、すぐそばに置かれた関連の新書や文庫を読むことで、興味や関心をさらに深めるという読書体験「DONDEN読み」を提案しています。「DONDEN」という名も、「マンガを起点に知の奥へ向かう『知のどんでん返し』を起こす」という狙いからです。 DONDENの監修者は、編集工学を提唱し、8月に亡くなった編集工学研究所所長の松岡正剛氏です。「マンガを活用したい」という松岡氏の提案を受け、編集工学研究所スタッフと近畿大学図書館職員の間で幾度も意見を交換し、2017年にオープンしました。