大阪の地元本650点集め「地本祭」開催 書店店員の思い
大阪の地元本650点集め「地本祭」開催 書店店員の思い 撮影:北代靖典 THEPAGE大阪
「大阪地本祭~御文庫と歩む」というフェアが「ジュンク堂書店大阪本店」(大阪市北区)で始まっている。大阪出版協会と日本書籍出版協会大阪支部の両会加盟22社が発行する書籍約650点を展示販売しており、これだけ多くの地元の本を集めたイベントは大阪初。タイトルにもある「地本(じほん)」は、「地酒みたいな地元仕込みの本」という意味だ。大阪の出版活性化を目的に開催されたもので、期間は7月30日まで。 売り上げも書店数も減少続く 「出版不況」の現状は?
業界を盛り上げようと1年前から企画
全国に3000社を超す出版社があるものの、東京に8割が集中していると言われる。そんな中、「大阪地本祭」は、「大阪も東京、京都と並ぶ出版の都であった」ことを再認識してもらい、業界を盛り上げようと約1年前に企画がスタート。 参加の版元は以下の22社で、A5判52ページのカラーパンフレットを用意し、各社の概要やおすすめ本などを紹介している。 ▽和泉書院▽大阪大学出版会▽関西大学出版部▽関西学院大学出版会▽萌書房▽弘文社▽振興出版社啓林館▽清文堂出版▽創元社▽増進堂・受験研究社▽竹林館▽東方出版▽朱鷺書房▽永井書店▽日本実業出版社▽日本文教出版▽燃焼社▽BL出版▽ひかりのくに▽歩行開発研究所▽メディアランド▽養徳社
平台に並べることで目にとまりやすい
ジュンク堂書店大阪本店・人文科学書担当の田中慎氏(31)は、こう話す。 「1年前からの企画ですが、私の前任者が出版社と企画を練って今回初開催に至りました。大阪の出版社さんが一堂に本を集めて、地本祭をという形で行うことになったんです。当店のイベントスペースでは、これまで出版社の100周年フェアなどもやってきました。本を買う人にとっては、出版社がどこかはあまり関係がない。でも、これだけ多くの地元の出版社が集まることはないので、出版社を知ってもらう機会にもなる。棚に入ってしまうとわかりませんが、平台に並べることで目にとまりやすいでしょう。特色のある本が多いですよ」 大阪出版協会は江戸時代に結成された「御文庫講」に端を発しており、当時は大坂は江戸、京と並ぶ出版業の中心地だった。住吉大社と大阪天満宮の「御文庫」に初版本を納本、春秋に納められた本の虫干しをする“曝書(ばくしょ)”を行なったり、天神祭の渡御に参加するなどの活動も壁面展示して紹介している。
今、書店は両極化している
また、入社8年目の田中氏によれば、「今、書店は両極化していると思います。大型書店化が進む一方で、小さな書店が特色を出しています。中規模のところがけっこう苦しいのかなと思います」 出版不況と言われて久しいが、地酒ならぬ地本を知る機会にもなるのではないか。 期間中には連動して6月18日に芥川賞受賞作『ハリガネムシ』(文藝春秋)などで知られる大阪育ちの作家、吉村萬壱氏のトーク&サイン会、7月2日には絵本読み聞かせ大会を予定している。 (文責/フリーライター・北代靖典)