フランス大使も認める秋元さくらシェフおすすめの「若狭の岩牡蠣」の魅力
シェフに薦められ、「若狭の岩牡蠣」を食べてみる。冬の定番である真牡蠣と違って、何倍も大きく、重い。なかなか一口で食べられないくらいのボリュームがあるのだが、それをぱくっと食べてみると、ワイン酢のさわやかな酸味に続いて、岩牡蠣らしい磯の香りと海のミルクとも言われる滋味に富む味が広がる。弾力のある歯ごたえはもちろんだが、確かに身がしっかりしていて、シェフが言うひだの部分はいつまでも噛んでいられるくらいだ。 「だから、お得な感じがするでしょう?」とシェフが笑う。築地市場では、福井・若狭産の岩牡蠣が出ないため、産地から直接取り寄せるという。「産地直送ものは、お客さんに特に喜んでもらえるんですよ」。
「若狭の岩牡蠣」のふるさと小浜湾
「若狭の岩牡蠣」のふるさとは、若狭湾国定公園の一部を構成する小浜湾にある。外海の若狭湾と内海の小浜湾とでは、小浜湾の方が波が穏やかで、古くから良港として知られてきた。小浜湾には、北川や南川の栄養豊富な水が山から流れこみ、岩牡蠣を大きく育てる。 漁期は6月から8月中旬ごろまでで、午前8時半ごろから出漁する。大島地区や内外海(うちとみ)地区などの岩場で漁が行われ、漁師は3~4メートルの海中に潜って岩牡蠣を捕る。 福井県漁連小浜支所長の森下宗一さんは「岩牡蠣は、食べるときは一つひとつになっていますが、海の中では岩のような塊になっていて、バールで塊ごと捕ってきます。これを船上や港でばらして、藻などの汚れを落とすのですが、これ大変な作業で、潜ってくる以上に重労働なんですよ」と話す。天然物ならではの苦労がそこにある。
昔の記憶を呼び起こす塩の味
小浜支所が生食用の岩牡蠣の出荷を始めたのは2005年で、ちょうど10年目を迎えた。水揚げされた岩牡蠣は、すべて殺菌冷海水で最低20時間以上洗浄される。2014年は、59トンが水揚げされたが、すべて素潜り漁で捕ってきたものだ。 岩牡蠣は成長が遅い。多く捕り過ぎると次のシーズンに出荷できなくなる。そのため、漁師一人につき1シーズン300個までという漁獲制限を設け、貴重な海洋資源を守る。競りにかけられた岩牡蠣は、仲買人を通じて県内外に流通することになるが、大量に出回らない理由はここにある。