【大河に松平定信】顕彰・発信お膝元から(12月20日)
1月に放映が始まるNHK大河ドラマ「べらぼう 蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」に、白河藩主・松平定信が登場するのを受け、白河市は活用推進協議会を発足させ、ゆかりの地を全国に発信する準備を整える。観光振興の好機を生かしつつ、先人顕彰を深める活動に期待したい。 ドラマは「江戸のメディア王」として、出版界に足跡を残した蔦屋重三郎の生涯を描く。生まれ育った遊郭・吉原や、文人や絵師、出版者、幕閣など主人公が関わる世界は多岐にわたる。寛政の改革を老中首座として主導した定信は、商業資本活用を進めた老中・田沼意次などとともに主要人物の一人として登場すると思われる。定信の少年期を俳優の寺田心さんが演じる。 活用推進協議会は鈴木和夫市長をはじめ白河観光物産協会理事長、白河商工会議所会頭ら官民が参画して25日に設立する。地域活性化とプロモーションを担当する部会と、定信を顕彰する部会を下部組織として、来年度から具体的事業を進める。市も協議会と連携しながら活動を始める予定だ。
観光振興は1801(享和元)年に定信が築造し、今年国史跡・名勝指定100周年を迎えた南湖公園のPRを最重点に、白河関跡や小峰城跡といった国史跡を巡る仕組みづくりが進められそうだ。 一方で定信の顕彰はどうか。寛政の改革にはさまざまな評価がある。出版統制の政策も行っていることから、ドラマでは主人公に逆風が吹く中での登場となることも十分に予想されよう。心ならずも「憎まれ役」とされはしまいかと懸念を抱く関係者もいる。 定信の評価の難しさの一つは彼が政治家であり、第一級の文化人でもあった多面性にある。寛政の改革でも七分積金は明治維新まで続き、その遺産を東京の立ち上げに役立てた渋沢栄一は、「善政」として敬慕の念を深めた。 ドラマの中での描かれ方はさておき、人物を再評価し、発信する役割は、定信を常に身近に感じてきた白河市民が担うにふさわしいと言える。先人顕彰が地域に活力を与えるのは、中山義秀文学賞の事例を見れば明らかだ。大河ドラマという好機をどう生かすか、市民の誇りと気概が試される。(広瀬昌和)