劇場に響いたすすり泣く声…ファンが歓喜した終盤のサプライズとは? 映画『室井慎次 生き続ける者』考察&評価レビュー
踊るファンが歓喜したメインキャラの生存確認
ただ愛情表現には惜しみなく、自分の能力を使っていた室井。 「家族でいられる時間は少ない」 劇中、彼は子どもたちにこんなことを言っていた。鑑賞後、この一言に全てが集約されていたのかもしれない。今回は前作で刑務所から出所してきた、児童虐待の罪がある父親がまた事件を引き起こす。ここに身を挺して、子どもを守る室井。 その前にも「?」と思う行動がいくつか見られている。室井は父親がまた息子に、そして自分にも愚行をすると予測していたのだろう。目を見張る、危機管理能力の高さだった。前述の犯人接触同様、正確無比ばかりを連ねていても何の解決にもならない。正しさを超えたところにある熱量のようなものが、何かを突き動かすのだとしみじみ。 そして最後に、熱血ファンの余談としての見どころを伝えさせてほしい。『踊る大捜査線 THEFINAL』(2012年)ですみれさんの様子が分からなくなっていた。が、本作で室井の口から生きていることが話されるので、どうか、どうか安心してほしい。 鑑賞後、映画館を出てカフェに入ったけれど、何だか気持ちが重たかった。心に霧がかかったようだ。そして今後の『踊る~』シリーズの全体像を考えた。新作はあるのか、そこで本作のリバイズがあったりして。そんなことを考えながら、今夜は『踊る~』シリーズの映画を自宅で観ようかと思う。 【著者プロフィール:小林久乃】 出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。
小林久乃