民主主義に合わない「日本人の国民性」
◇「日本の民主主義」を改善させるためには 民主主義が「日本人の国民性」にうまく適合していないなかにあって、これから日本政治はどこへ向かうのでしょうか。 国民全体に配慮するものの、負担や変化は先送りする政策が継続されることの行く末は、政府の財政赤字や債務残高の拡大であり、やがて国債発行を通じた資金調達が困難になると予想されます。 その場合の解決策の1つは、外圧の利用です。歴史的に日本では、国が大きく変化するときには明治維新や敗戦などの外的要因がありましたが、現代の日本政治の場合もそうなることが予想されます。具体的には、IMFから融資を受ける条件として、痛みや変化をともなうに経済や財政の健全化政策を受け入れるということです。 ただし、これは日本で民主主義がうまく機能しないことの帰結への対応であって、日本で民主主義がうまく機能しないという根本の問題への解決策ではありません。 では、日本で民主主義が機能するためにはどうすべきか。繰り返し説明しているように、その根には「日本人の国民性」の問題がありますので、急に改善することは難しいでしょう。周りに配慮し、自己主張を抑制しようとするので民主主義は合わず、普遍的な価値基準をもたず、もっぱら生活圏の中の人間関係の維持に注力する「日本人の国民性」は、政策論議に適合していません。 それでも、民主主義を通じて政策を決定していくしか、ほぼ選択肢はないのです。 改善策のひとつとしては、学校教育によって民主主義の基本をしっかり根付かせることです。日本では、政治や政党の話は人の価値判断に入り込み、対立や軋轢を生む可能性があるので避けられる傾向にあり、学校教育中でも正面から取り上げられることは少ないです。この点については、政策を政治や政党とは切り離し、純粋にその政策の意味や効果を学校教育の中で議論することを習慣づけるべきでしょう。 その際に意見の違いは、それを発する人、すなわち人間関係とは分けて考えて、純粋に政策効果のみの観点からの意見であることを認識させる必要があります。このような教育や習慣を身につけていないと、ただ投票率を上げたとしても、よい政策が選択されるとは限りません。 また「日本人の国民性」を背景とした総花的な政策を打ち出す政治については、選挙でもっと政党(候補者)間の違いが分かりやすく示されれば、選挙民も判断しやすくなるだろうと思われます。そして、政策の効果を知るには、専門家による政策効果の分析が不可欠です。この分野の研究を厚くして、政策効果の判断材料となるような分析が多く存在し、選挙民がそれを利用できる状況にあることが必要です。 いずれの改善策も「日本人の国民性」がゆえに実行は容易でありません。しかし、ここで議論したように、日本における民主主義の問題点やその帰結について考えてみることは、日本の民主主義の改善へ向けた第一歩として大きな意味をもつと私は考えます。
塚原 康博(明治大学 情報コミュニケーション学部 教授)