世界が注目する神保町の古書店。NY「 ダシュウッド・ブックス」店主の古書店めぐり
ニューヨークの写真集専門書店「ダシュウッド・ブックス」。その店主であるデヴィッド・ストラトルが毎年訪れる、神田神保町の古書店街での買い付けに同行。「ボヘミアンズギルド」と「ヴォルス ブックス」で入手したのは一体? 「ダシュウッド・ブックス」店主の神保町めぐりに同行(写真)
Bohemian’s Guild(ボヘミアンズギルド)
1924年、池袋で「夏目書房」として開店し、その後神田神保町へ移転。約100年にわたり営業を続ける美術系古書の老舗で、2階にはアート展示スペースもある。ストラトルは今回、大竹伸朗の『既景』『憶速』『MICHELLE: FIND THIS MAN』、細江英公の『たかちゃんとぼく』、ホンマタカシの『六本木ヒルズ』、立木義浩の『私生活/加賀まりこ』などを購入した。「立木は、アートディレクターや雑誌のフォトグラファーに人気があります。60~70年代のサム・ハスキンスなどにも見られるような、ある種のエキセントリックさがあるね。欧米ではあまり見かけない感じ」
住所:東京都千代田区神田神保町1-1 木下ビル1F・2F TEL.03-3294-3300
Wols Books(ヴォルス ブックス)
源喜堂で長年写真集を担当していた店主が昨年オープン。ここでは長島有里枝による初めてのセルフヌード写真集『YURIE NAGASHIMA』、古屋誠一『クリスティーネ フルヤ=ゲッスラー メモワール1978-1985』を購入。「長島もダシュウッド・ブックスから写真集を出した。本当に素晴らしい写真家だ」 住所:東京都千代田区神田神保町3-10-3 松晃ビル1F TEL.03-6261ー2251
「Dashwood Books(ダシュウッド・ブックス)」とは
ニューヨーク・ノーホーにある「Dashwood Books(ダシュウッド・ブックス)」は、世界のクリエイターたちを魅了する写真集専門書店だ。店主は、世界最高峰と称される写真家集団マグナム・フォトでディレクターを務めていたデヴィッド・ストラトル。この書店をオープンしたきっかけが日本にあることはあまり知られていないかもしれない。 「マグナムを辞めて、次は何をしようか?と考えていたとき、妻(スタイリストのアン・クリスチャンセン)が『T マガジン』の仕事で荒木経惟と東京で撮影するというので同行したんだ。そのとき、青山の『オン・サンデーズ』に行く機会があり、大きなインスピレーションを得た。ブックコーナーがアート本のブティックみたいで、品揃えがとても洗練されているのが斬新だった。当時ニューヨークのアート系書店といえば古本に特化したところが多かったから」 2005年、自身の蔵書を売るところからスタート。次第に日本の写真家や出版物にも人気があることがわかってきた。 「『ヒステリックグラマー』が作る本は装丁も美しく、ファッション業界の人に人気が高かった。マグナムで働いていた頃から、写真家のマーティン・パーやブルース・ギルデンなんかと一緒に神保町の古書店街を訪れていたんだ。ブルースは森山大道や荒木経惟のビッグコレクターだったね。神保町を歩いて書店を回ると、新しい本に出合う。大竹伸朗も実際に来たから知ることができた。100冊買うとしたら5 冊は新しい写真家のものを買うね。今回はホンマタカシを重点的に探しました」 今年はホンマとの出版プロジェクトが続く。ホンマタカシの『17』をダシュウッド・ブックスが版元となり刊行。秋にはセッション・プレスと共同で、文化人や一般の人などさまざまな日本人を被写体とした『Portrait of J』を刊行予定。写真家にとって、ダシュウッド・ブックスが世界への登竜門になっているのは間違いなさそうだ。 デヴィッド・ストラトル イギリス出身。写真家マリオ・テスティーノのアシスタントなどを経てマグナムへ。2005年「ダシュウッド・ブックス」をオープン。https://www.dashwoodbooks.com BY AKIKO ICHIKAWA