「大雨で数万人が孤立」なのに意外と平気…奇跡のフェス「バーニングマン」は想像を超えるクレイジーさ(前編) イーロン・マスクらIT長者がこぞって参加、7万枚が即完売、お金の通用しない場所
その一方で、一糸もまとわずに歩いたり自転車に乗っていたりする人たちも何人も見た。街の中でそんな格好をしていたら即刻逮捕ものだろうが、そもそもここに警察はいない。恐らくはドラッグを摂取している参加者も一定数いたのだろうが、ケンカや言い争いといったトラブルは見かけなかった。 巨大なスピーカーセットとDJを乗せた改造トラックがゆっくりと砂漠を移動し、その後ろを思い思いの格好をした多くの男女が踊りながらついていく。その様は、現代の「ええじゃないか」とも、「愛と平和に満ちたマッドマックス」とも形容したくなる光景だった。現地に行くまでは20代、30代の若い世代中心のお祭りだと思っていたが、初期から来続けているという70代の夫婦もいたし、幅広い年齢層がいたことも意外だった。 ▽垣間見えた「違う未来」 何よりも衝撃的だったのが、お金を使う機会が、氷を買うとき以外は本当にないことだ。飲み物も食べ物もすべて無料。それぞれのキャンプが自らの貢献として提供する。参加者はごみの量を極力減らすため各自がコップや皿を持参する。
「郵便局」ですら、絵はがきや切手は置いてあるが、窓口の女性は「売り物ではありません」という。何か用事でも手伝ったらいいのか、と聞くと、女性は少し考えて「そうね、それもさっき他の人にお願いしたばかりだし…。では、どうしてここに来たのか、話を聞かせてもらえませんか」。記者をしており、バーニングマンのことを日本の読者に伝えるつもりだと説明すると、「素晴らしい話をありがとう」と笑顔で葉書を出し、投函を約束してくれた。このほか、ここではステーキから衣服、耳栓、キーホルダーまで、とにかく見知らぬ人たちがいろいろなものをくれた。 「一度ここに来ると、物事の見方が変わる。実生活では人工知能(AI)に支配され、ロボットのように働いていても、ここには完全な自由がある。何をするにも誰の許可も求める必要がない。それに、普段こんなに他人を助けることはないけど、ここでは過酷な環境の中、皆が助け合って生きている。それこそが人間の本来の姿なのよ」。ロスのマーケティング会社で働くクリスティーナ・テリンさん(40)は、バーニングマンの魅力をこう語る。