「大雨で数万人が孤立」なのに意外と平気…奇跡のフェス「バーニングマン」は想像を超えるクレイジーさ(前編) イーロン・マスクらIT長者がこぞって参加、7万枚が即完売、お金の通用しない場所
主催団体でキャンプの審査や配置を担当するブライアント・タンさん(43)によると、今年は場内に約1200のキャンプがあった。一つのキャンプあたりの人数は3人から約400人と、ばらつきがある。東京・新宿のゴールデン街を再現したという”Golden Guy”というバーから、大勢の人を集めて一気に大量の水と石鹸の泡を浴びせるシャワー場まで、それぞれのキャンプが個性を競い合う。来場者の1割程度はキャンプに属さず、そうした人たちのために自由にテントを張れる区画もある。日本から訪れ、そうした場所でソロキャンプしている人たちにも何人か出会った。 筆者がトモ君と一緒に入れてもらったのは、彼の友達のイタリア人たちを中心とする15人程度のキャンプだった。出し物は、イタリア式のアペリティーボ(食前酒)。これを会期中は午後6~8時に出すと主催者側に提案し、設置のための区画が割り当てられた。メンバーはキャンピングカーで来ている人たちとテント持参の人たちが半々くらいで、簡易式のシャワーやキッチンを共有できるのはありがたかった。初日からバーカウンターなどの設営を手伝い、「営業」を始めた2日目からは、通りを行く人たちに「冷えたプロセッコいかがですか~」などと声をかけ、招き入れるのが筆者の役割となった。
▽クレイジーなビジュアル 会場内を回ってみてまず驚いたのは、その巨大さだった。自転車で移動する人が多いのだが、さまざまなキャンプが立ち並ぶ「街」の端にはしばらく漕いでもたどり着かない。ようやく街の端まで出てきても、今度はバーニングマンのシンボルである「マン」と呼ばれる巨大な木の人形や、「テンプル」と呼ばれる寺院のような建物(これらは最後には燃やされ、イベントのクライマックスとなる)をはじめ、さまざまなアート作品が点在する砂漠が延々と続く。会場全体の面積は約16平方キロメートルと、東京都渋谷区や中野区よりも大きい。 次に驚いたのが、ビジュアル表現の豊かさだ。もっと単純に見た目のクレイジーさと言ってもいい。バーニングマンは「10の原理」があり、その一つに「Radical Self-expression」(とことん自己表現せよ)というものがある。これに則ってか、参加者の服装や行き交う乗り物は奇抜を極めている。女性は年齢も体型もあまり関係なく総じて露出度が高い。男性も全身銀のラメタイツだったり、裸の上に毛皮のコートだったり、街ではなかなか見かけない服装の人ばかりだ。トラックを改造した巨大な宇宙船や魚のような自動車があるかと思えば、自転車を改造した手漕ぎボートのような乗り物も走っている。