千葉大の横手幸太郎学長が運営費交付金削減に危機感「国の支援もっと必要」
千葉大は11日、同市稲毛区の西千葉キャンパスで記者懇談会を開き、横手幸太郎学長らが今後の大学運営の方針などを語った。人口減少や物価高騰などで国立大を取り巻く環境が厳しさを増す中、横手学長は「国からの支援がもっと必要だ」と訴え、大学側の資金獲得に向けた努力だけでは限界があるとの認識を示した。 大学の運営が苦しくなった背景の一つに、国から大学に配分される、教育や研究に自由に使える資金「運営費交付金」の削減がある。国立大が自由な判断で発展できる道を探るために実施された平成16年の法人化に伴う対応だ。横手学長は「法人化とセットでの交付金の削減は当初予測されていなかった。光熱費や人件費が上がる中で、千葉大でも交付金が毎年2億円ずつ減額されている。過去15年で30億円の減額だ。生きる道がなくなる」と嘆いた。 生き残るための資金獲得に向け、企業との産学連携などの取り組みも進めてきたものの、大学だけの努力では「限界がある」と指摘。インフラの老朽化や、人員削減などによる教職員の疲弊など影響が出ているとし「根本的に国からの支援がもっと必要だ」と述べた。 国立大学の運営を巡っては、東京大が設備の老朽化などに対応するため、授業料の値上げを検討。一方、千葉大では令和2年に「全員留学」などを掲げて授業料をすでに引き上げた経緯がある。省令で定める授業料の上限に達しており、これ以上値上げできる余地はなく、国の支援は欠かせないとする。 今後の大学運営に向け、横手学長は目先の利益ではなく、未来を起点に現在の行動を決める「バックキャスティング」の発想が大切だとし、キャンパスそれぞれの現場の意見に耳を傾ける考えを強調。膨大なデータを解析し、幅広い分野に革新をもたらすと期待される「データサイエンス」教育にも力を入れ、「誰もが自分らしさを追求でき、生き生きと人を豊かにする魅力あふれる大学を目指していきたい」と意気込んだ。(松崎翼)