「ダンディ」は西洋では死語 写真集名を「JAPANESE DANDY」にした理由
全員素人、なのに素敵 欧米人から見て、「JAPANESE DANDY」はどう映る?
「全員が素人なのに、ものすごく素敵に写っている。ちょっと気を使えば、みんなこうなれますよ、ということなんです。若い人、リタイアした人……ジャージ姿も家の中ではいいかもしれませんが、一枚でもジャケットを持っていることで、見えてくる世界が変わってくるんじゃないかと。テーラードの楽しみ方を知ってもらうきっかけになれれば」 200年を超える歴史を持つ紳士服テーラー、英ロンドンのヘンリー・プール。1858年にナポレオン3世の御用達認定を受けて以降、世界各国の王室の御用達となった。宮中服では1976年にエリザベス2世のロイヤルワラントも受けた。そんな由緒ある老舗から「JAPANESE DANDY」を店頭に置いて売りたいと依頼がきたという。たとえてみれば、海外の名門オーケストラから日本人の演奏家にコンサートマスターのオファーが届いたようなものだ。明治時代から西洋のファッションを日本人が着るようになって、約150年。欧米と比べ体格的にハンディがあると思われる日本人の洋装だが、当の欧米人から見て、彼らの着こなしにはない何か独特の魅力を日本人が放っていることになる。 「ダンディという言葉は、実は西洋では死語なんです。どちらかといえば相手を茶化すニュアンスがある。中身がなく服にしか気を使わない人、みたいにね。でも、こういうおしゃれな人たちを形容する言葉、日本ではダンディかジェントルマンぐらいしかないんですよ。ダンディは日本ではいい言葉。だから、日本人が考えるダンディでいいと思ったんです。逆に西洋の方に『ああそうか、日本人が考えるダンディってこういうことか』と感じて欲しいですね」
単なるカッコいいだけではない
スタイルに自信がある限り、世界を相手にしても物怖じすることはない。 「JAPANESE DANDY Monochrome」は、4100円とリーズナブルだ。「JAPANESE DANDY」が1万円だったことから、若くてあまりお小遣いのない層にもぜひ写真集を持って欲しいとの思いが、モノクローム版の制作を後押しした。もちろん、表現の面でもモノクロームならでは、伝えられることがある。 「装うスタイルを通して、服を着たその中の人を、撮りたいんです。それがモノクロになって、より表現できているんじゃないかなと。その人の雰囲気とか、生きてきた道すじを考えてから撮るんです」 生きてきた時間が、その人のスタイルになる。ファッションも、写真も、時間を切り取り、時代をとどめおくのに適したもの。この写真集を手にした人が、その後、どんな服をどのように着て日々を過ごすようになるのか。上質なディナーを楽しむように写真集をめくり、味わい、最後のページを閉じたその先が、とてつもなく楽しい。 (取材・文・撮影:志和浩司)