「演技」をするのは当たり前? 「今日は素で話し合います」のワナ
■提案:まずはあなたの「武装解除」から ここからが、そんな彼らと接する上での、僕からの提案だ。 まず知っておいてほしいのは、若手側には「騙す」という悪意があるわけではないということ。「1on1とは、そういう場なのだから、それ専用のスイッチを押したまで」という認識だ。 僕はこれを「テンプレート」と呼ぶ。今の若者は(特にナイーブな心的領域において)コミュ力が高く、多くのテンプレートを持っている。 でもそれは、円滑かつ平穏に社会生活を送るための彼らなりの装備であり防具だ。 自分がそうだから、きっと上司も「上司専用テンプレート」をもっていると考える。やや強い言い方をすると「かけてくる言葉には裏がある」という見方だ。 自分たちは、会社という組織に雇われた「人材」という構成要素であり、その中で、1on1には「部下の成長を促す場」「部下の課題を共有する場」という名目がある。 よって上司は、部下に問題があれば事前に察知しなければならないし、今後の状況によっては部下を味方につけておきたい、という狙いがあるのではないかと考える。 誤解を生じさせないために繰り返すが、こういうタイプは、上司や会社というものを「悪」と断じて接しているわけではない。会社という組織があり、そこには必要な役割がある、と冷静に受け止めたうえで、安定した日々を送るための自分なりの武装をしているだけだ。 もしあなたが、このタイプに「もっと腹を割って話してほしい」とか「もっと主体的にがんばってほしい」と願うとすると、それはなかなか大変だ。とても時間がかかると思ってほしい。 そこで僕からの提案はこうだ。 まずはあなたが武装解除しよう。 あなたの武装解除とはつまり、「次の面談相手は彼(彼女)だから、なるべくこう振る舞って・・・」と、必要以上に上司スイッチを入れないこと。 簡単に言うと、腹を割って、裏表なく話をすることだ。 あなたが何らかの意図を隠して対話したり、二枚舌を使うような姿勢をとったとしたら、それはやはり見透かされる。 そして「この人にはコントロールされまい」と意思を固め、より分厚いテンプレートによる演技で対応されるだろう。 それはそれで安定した関係、と言えるわけで、もしそれで十分仕事が回るなら、僕はそれでいいと思う。むしろ、せっかくお互いで築いた城壁だ。壊さない方がいい(これは本当にそう思って書いてます)。