捕まったら最期、「絶対に有罪」…プーチンを批判したジャーナリストが受けたロシア当局の「恐ろしすぎる弾圧」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第6回 『「フランス大統領があなたに」…生放送で反戦を訴えた女性にプーチンを崇拝するロシア当局の尋問官が突然態度を豹変させたワケ』より続く
密かに聞こえる賛美の声
オスタンキノ裁判所の外には張り番の記者が何人かいた。警察車両の中から手を振ったが、窓には濃い遮光シートが貼られていて、彼らにはこちらが見えないようだった。捜査官たちはわたしを裏口から裁判所に入れた。 「頑張れ、あなたは本当の英雄だ!」 廊下で見知らぬ男性がささやいた。わたしは微笑みを返した。 3階まで上り、法廷に入った。 書類を取って審理延期要望書を書き始めた。わたしには弁護士がついていないからだ。その時、法廷にスポーツマンタイプの背の低い男性が駆け込んできた。 「やっと見つけましたよ」男は息をついてうれしそうに言った。 アントン・ガシンスキーはベラルーシ出身の有名な弁護士で、必要な書類を急いで記入し始めた。わたしには17歳の息子キリルと11歳の娘アリーナがいることを話し、子供たちに電話をかけたいので、電話を貸してくれ、と言った。 「キリル、そっちはどう?」わたしは息子に尋ねた。 「前もって言ってくれればよかったのに。こっちは大騒ぎだよ……」息子の声は不満そうだった。 「言えなかったのよ。あなたは止めようとするでしょうから。先週ナヴァリヌイ事務所がプーシキン広場で開いた反戦集会に行こうとしたら、あなた、クルマのカギを隠したじゃない。でもね、これを黙って見過ごすことにはできなかったの」