オードリー・タン「結婚しても家族にはならない」台湾で同性婚が認められたワケを明かす
アジアで初めて同性婚が認められた台湾。35歳という若さで台湾初のデジタル担当政務委員(大臣)に就任し、自身もトランスジェンダーであるオードリー・タンが、日本における同性婚合法化の可能性や「家族」の形の変化を語って。『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けします。 【写真】止まらない「新たな台湾人Z世代アイデンティ」
「家族」は社会に決められている
それが女と女であれ、男と男であれ、女と男であれ、同じことです。また、誰もが男と女のいずれかに属するわけでもありません。 愛は愛です。そこに実質的な違いがあるとは思いません。 先ほど、「性的指向を問われたら『私はサピオセクシャルです』と答える」と述べました。 私が愛するのはホモサピエンス――この答えには真実があると思います。個人と個人の間に愛が生まれるのは、相手が何かのカテゴリーに当てはまるからというわけではありません。 その人がどこかの組織に属しているから、愛するのではない。 その人が何かのグループに当てはまるから、愛するのではない。 その人がその人だから、愛する。 愛とはただ、人間本来の自然な感情の発露です。 いっぽう、家族というのは社会的構築物です。歴史を振り返れば、家族はさまざまに異なるかたちで形成されてきました。
アジア初同性婚の合法化
「日本の家族の形も変化している。かつての大家族から、ほとんど個人主義とも言える小さな家族に急速に移行したし、結婚の形もまた変化している」 こんな話を聞いたときは、そのとおりだな、と共感しました。 台湾の歴史においても、日本と同様のことが言えます。 また、文化が異なる台湾原住民は、それぞれが家族に対してかなり異なる考えをもっているのは言うまでもありません。 さらに中国本土の福建省南部から台湾に渡ってきた漢民族には、「結拜兄弟(blood brothers)」という考え方がありました。 血縁や婚姻関係がなくても兄弟の契りを結ぶというもので、もともと社会的儀式として始まったもののようです。結拜兄弟の深い関係性は、今の私たちが考える同性カップルと通じる点があります。すなわち、台湾において家族のかたちも、ジェンダーと同様、昔から多様であったということです。 2019年5月、台湾はアジアで初めて、同性間の結婚の権利を合法化する特別法案を可決しました。同性婚が合法化されている国は世界におよそ2割あり、オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ブラジル、南アフリカ、オーストラリア、アメリカなど。 アジアでは今のところ、台湾が最初にして唯一の法的に同性婚を認めた国であり、あとはタイでパートナーシップ法が閣議決定しただけです。