日本の未来がヤバい…ノーベル賞科学者・山中伸弥が暴露する科学界の「驚きの実態」と「ユニーク」が一番大事と語るワケ
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 それぞれの分野の最先端を歩む“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が人間とAIの本質を探る『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋して、新時代の道標となる知見をお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第26回 『「今からシリアの戦地に行ってきます」天才棋士・羽生善治が仰天する、向こう見ずな「Z世代」の衝撃的な行動』より続く
「基礎研究」の本当の意味
羽生 最近、例えば科学の基礎研究を進める環境が厳しくなってきているという指摘があります。先生は、そうした基礎研究をどういうかたちで進めていくのがいいとお考えですか。 山中 僕自身の経験を振り返ると、iPS細胞ができるまでに20年くらい研究したのですが、完全に基礎研究なんですね。iPS細胞ができてからは、このiPS細胞をいかに応用にまで持っていくかという応用研究になっています。両方とも違う意味で非常に大切です。 基礎研究は何がどう役に立つかまったくわかりません。役に立つか立たないかを考えると、逆にあまり面白い研究ができない。ともかく科学に突破口を開けて飛躍的進展をもたらすのは基礎研究だと僕は確信しています。 それが今の日本で、昔に比べて本当にやりづらくなっているのか。そこまで悪くはないと僕は思っているんです。基礎研究を支える文部科学省の科研費、つまり科学研究費そのものがすごく減っているわけではないんですよ。
「基礎研究」の衝撃的な「インフレ」
羽生 あっ、そうなんですか。 山中 減っていることはないんですが、研究にかかるコストが以前よりどんどん高くなっているので、そういう意味では相対的にはかなり大変かなと思います。 羽生 それは、どんなテーマでもそうでしょうか。 山中 いや、テーマにもよります。たとえば僕が大学院生のときは、年間100万円くらいあれば、実験を続けることができたんですね。でも今は100万円では1ヵ月も持たないと思います。ゲノムの解析技術がどんどん進んで、いろいろな試薬もますます高くなっていますから。そういう意味で、資金不足は基礎研究だけではなくて、全般にかなり問題にはなっていますね。